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DO!NUTS TOKYO事務局
2021年6月24日 09:05

「選ぶ」からはじまる、脱炭素型ライフスタイルvol.1

個人のCO2排出量を知る新しい指標。 「ライフスタイルカーボンフットプリント」って?
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個人のCO2排出量を知る新しい指標。
「ライフスタイルカーボンフットプリント」って?

産業革命以降増え続けるCO2によって上昇し続けているとされる地球の気温。この上昇値を1.5℃以下に抑えるべく、国を超えた世界的な連携が急務となっています。とはいえ、私たち一人ひとりは暮らしのなかでいったいどのように行動すればいい?そんな疑問を解きほぐし、行動につなげるために、「環境問題一年生」の編集部・井上が、まずは食生活のポイントからValue Frontier株式会社(DO!NUTS TOKYO事務局)の環境経営コンサルタントの梅原さんと大野さんにたずねました。


――最近は新聞でも「脱炭素」「ゼロエミッション」という言葉を見ない日がないくらい、政府も企業もCO2排出削減に向かい始めていると感じます。私たちが個人でもできることから取り組みたいと思ったとき、日々の暮らしのなかではどのような選択や行動が有効なのでしょう。

梅原:私たちが日々の暮らしのなかでできることは、本当にたくさんあると思います。
それは逆に言うと、私たちは現状の文明社会で暮らしている限り、あらゆる場面でCO2排出に加担してしまっている、ということ。CO2削減と聞くと「車に乗らない」とか「電気をこまめに消す」といった直接的なエネルギー削減のアクションを思いつきやすいのですが、それ以外の日々の行動や選択がCO2排出につながっている場合も多くあるんです。

――それはどういう場面でしょうか。

梅原:たとえば食品や洋服など日常的な物品購入、通勤や旅行などの際の移動、スポーツ観戦のときでさえ、製品を作る過程やサービスを提供する過程で使われたエネルギーからCO2が排出されているはずですよね。それを利用している私たちは「間接的なCO2排出」をしていることも意識すべき、という考え方が今、世界的な潮流となっています。
この私たちの日々の生活に関わる直接的・間接的なCO2排出は総じて「ライフスタイルカーボンフットプリント」と呼ばれています
「カーボンフットプリント」とは「炭素の足跡」という意味。つまり私たちが日々、地球に与えている「CO2のインパクト」を、数値で見える化したものです。

――「ガソリンの節約」などのわかりやすいものだけでなく、商品やサービスの先で排出されるCO2まで……。想像したことがありませんでしたが、たしかにそう考えるとできることがまだまだありそうです。

梅原:そうなんです。私たちがより低炭素な選択や行動をすることで地球温暖化の緩和に貢献できる、ということは、最近の研究からも明らかになっています。例えば、IGESの「1.5℃ライフスタイル」レポート」※1では、私たちの生活の中で、どんな選択や行動をすると、どれくらいCO2を減らすことができるのかが示されています。そして「カーボンフットプリント」は、その行動の指標として役立てられるものなんです。

――身近な生活のなかで具体的にできるアクションやその効果が、おおよそでもわかるというのがいいですね。
私も、「再生すればまだ使える資源を捨ててしまうのはもったいない」という気持ちからプラスチックのリサイクルを意識的に行ってきましたが、容器を洗ったり分別することを少し面倒に感じたり、「これで意味があるのかな?」と無力感を感じることもあるんです。でも、それがどれくらいCO2削減になっているかを知ることができると、継続して頑張ろうかなと思えそうです。

梅原:自分が環境のことを考えて行動している効果が見える化されると、モチベーションも高まりますよね。
また、環境に良いことを「頑張る」という意識から、よりサステナブルな商品選びで心地よい暮らしを楽しむ、ライフスタイルをアップグレードしていく、といった気持ちにシフトしていけたほうが、長続きできると思いませんか。

――たしかに。ついつい「頑張らなくては」と思ってしまいますが、ライフスタイルを心地よくアップグレードすると考えると、ちょっとワクワクしてきます。では、具体的にはどんな選択や行動をすると、より低炭素な生活ができるのでしょう。

梅原:では、具体的なお話の前に、私たちの現状を少し見てみましょう。IGESのレポートによると、日本人は日々の生活のなかで、一人あたり年間平均7.6トンのCO2を排出していることがわかっています。

(出典:IGES(公益財団法人地球環境戦略研究機関)「1.5℃ライフスタイル-脱炭素型の暮らしを実現する選択肢―」一人当たりライフスタイル・カーボンフットプリントおよび削減目標とのギャップ)

―― 一人当たり一年で7.6トン……多いのか少ないのか、全くイメージできません(笑)。

梅原:CO2は目に見えないので分かりづらいですよね。レポートでは中国の平均が4.2トン、インドが2トンとされていますので、比較すると私たち日本人のフットプリントが大きいことがイメージできると思います。
気候危機を回避するため、地球の平均気温上昇を産業革命前から1.5℃未満に抑えるためには、あと10年で日本人の年間平均7.6トンを約1/3に減らすことが求められています。

―― は、半分!そんなことは可能なのでしょうか。

梅原:可能かどうかというより、やるしかない、という状況ですね。そのために世界の国々や都市、企業などは2050年ごろまでにCO2排出量の実質ゼロを目指す「カーボンニュートラル」を宣言し始めています。東京都も2019年に「ゼロエミッション東京戦略」を発表し、エネルギーや交通、建築、資源循環などあらゆる対策を進めて2050年の実質排出量ゼロをめざしています。そして、この達成のためには私たち個人の行動変化も不可欠とされているんです。

※続きは、「選ぶ」からはじまる、脱炭素型ライフスタイルvol.2

■出典
※1 IGES(公益財団法人地球環境戦略研究機関)「1.5℃ライフスタイル-脱炭素型の暮らしを実現する選択肢―

■参考資料
エナジーシフト「プラネタリー・バウンダリーとSDGsパート3

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