若者アンバサダープログラムの学びシリーズ第7回目のレポートです。
「学びシリーズ」は、DO!NUTS TOKYO公式アンバサダーの皆さんに向けて行われるレクチャーであり、若者アンバサダーとして活動を行っていただく上で参考になると思われる知識の習得や、ご自身の考えをより深めていただくことを目的としています。
第7回目は、2021年9月3日(金)に、サステナブルライフスタイルTOKYO実行委員会委員であり、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 経営企画部副部長の吉高まり氏を講師にお迎えし、「あなたの1円が社会や未来を変える!?」をテーマに開催しました。
レクチャー後は振り返りとして、グループディスカッションを行い、活発な意見交換が行われました。
■レクチャーレポート
1.ポイント
- ファイナンスも持続可能な社会を追求している
- ESG投資:非財務情報も新たな企業価値と考慮した投資
- 株式会社と金融機関の資金の持続的な循環を実現するためには、情報開示を通じた良好なコミュニケーションが必要不可欠
- ESG投資の中でも気候変動は主要テーマの1つで、金融機関は気候変動に関するリスクなどの情報開示・SDGsビジネス推進のための長期的戦略などを本格的に取り組むことが近年求められている
- 資本の循環システムが「株主資本主義」から、「ステークホルダー資本主義」へ
2.サマリー
経済の仕組み、特に金融市場において、どのように私たちが気候変動問題にアプローチすることができるのでしょうか?経済学において、環境・気候変動課題は、需要と供給の市場フレームワークの中で負の外部性として認識され、もたらされた社会的費用は今までは税金や補助金によってまかなわれてきました。しかし1980年以降から自然災害は急速に増え続け、経済損失額の急増と価格変動が、従来の経済システムに世界的脅威を与えています。
本講義では主に金融機関を通じて、気候変動などの社会課題解決を目指すアプローチとして「ESG投資」について学びました。
ESG投資とは、収益や業績などの財務情報のみならず、E(環境)、S(社会)、G(企業統治)の観点などの非財務情報も企業価値として評価し、投資を行うことです。ESG投資の考慮される主要領域としては、
E:気候変動
S:サプライチェーン管理、人的資源・人権
G:コーポレートガバナンス
などのテーマがあります。ここでのGは企業統治、倫理活動として、定められた法律に遵守することに対し、E・Sは法では現時点ではまだ定められていない、将来のリスク・ビジネスチャンスの領域として考えるとわかりやすいでしょう。
そもそも金融機関は資金の流れを支援する場であり、間接金融(銀行)と直接金融(証券市場)の2つに分類されます。欧米では、企業は資本市場(企業の設備資金や長期運転資金などといった企業の資本調達をする株式や債券の取引が行われる市場)での資金調達が主流である一方、日本では歴史的に銀行との取引が主流です。
株式取引では、投資家が公開情報に基づいて企業を評価しますが、銀行取引は、企業は審査に必要な情報を銀行に提供します。従って、特に、海外投資家などが評価する情報開示の仕組みが十分整えられていないことで、日本の企業価値が十分市場で評価されていませんでした。企業の経営者にとって、企業価値の向上や株主との資金の好循環を実現するために情報開示や良いコミュニケーションは必要不可欠です。
リーマンショックを契機に欧米を中心に、短期的金銭利益の追求から、長期的かつ総合的な利益の評価を重視する傾向に変わり、非財務情報なども考慮したESG投資が始まりました。近年はコロナ禍に伴い、ESG投資の潮流がさらに加速しています。日本では、2015年に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が責任投資原則(PRI)に署名したことをきっかけに、ESG投資の流れが開始しました。
この潮流は、欧米において「株式資本主義(収益・業績などの短期的利益に焦点を当てた株主至上主義)」から「ステークホルダー資本主義(事業を通じて社会に貢献することを重視した概念)」という大きな変革をもたらしています。SDGsをコミュニケーションツールとして、企業側は長期的視点でのあるべき姿を軸にバックキャスティングを行いながら、社会課題を新たな社会のニーズ・機会ととらえて事業展開を行います。また、金融機関もTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の設置に伴い、気候変動がリーマンショック並みの金融システムの安定を脅かすリスクであることを認識し、投融資先に対してリスクを把握して、ESG投資を推進することが求められています。
これらを踏まえ、講師の吉高様は最後に、お金の使い方で社会が変えられること強調されながら、私たちにできることとして、①銀行などの金融機関の開示情報の確認、②食品・電力会社など日頃利用する・気になる会社のサステイナブル経営を調べる、③クラウドファンディングやふるさと納税、寄付、ESG投資等を始める、の3点を提案されました。
3.感想
大学院で経済学修士課程を学び、環境経済学を専攻とした私にとって吉高様の講義は、「お金の仕組みで持続可能な社会を実現していく」具体的な方法であり、刺激の多いものとなりました。吉高様の講義は、金融機関の仕組みに関する知識に乏しい私にもわかりやすく、かつ力強い熱意がこもっていました。
特に講義を通して最も痛感したことは、「消費者として情報を知る重要性」です。経済学においても情報の非対称性は、効率的ではない資源配分や結果もたらすと考えられています。まさに今回の講義では、「消費者が各企業の活動をよく理解しお金を使うことで、初めてより持続可能な資金循環が成立する」ということを学びました。これを踏まえて、今一度、自分の身近なお金の使い方を見直し、2030年さらにその先を見据えた生活を描きながら、ESG投資をさらに自分ごとにおとし込めるよう、さらに知っていきたいと思いました。
4.同世代に伝えたい点
- 気候変動は金融市場においてリーマンショックと並ぶ規模の世界的脅威。
- 消費者として商品を選択すること、お金の使い方を選択することが環境を変える。
- 様々な企業は現在、気候変動に関する情報開示をおこなっている!
- 金融庁もTCFDに基づき、気候変動関連情報の開示義務化に向けて動いている。
- Z世代の私たちも強力な外圧!気候変動のことについて企業や投資家に影響を与えられる!
- 1円からでも、お金のことを考えてみよう。

【講師】
吉高まり
サステナブルライフスタイルTOKYO実行委員会委員
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)経営企画部副部長
サステナブルビジネスウィメン
明治大学法学部卒業。IT企業、米国投資銀行等で勤務。ミシガン大学環境・サステナビリティ大学院(現)科学修士、博士(学術)。2000年三菱UFJモルガン・スタンレー証券にてクリーン・エネルギー・ファイナンス部を立ち上げ。環境金融コンサルティング業務に長年従事。

【レポート執筆】
山根未來/第1期若者アンバサダー
英国バーミンガム大学大学院経済学修士課程修了見込。環境経済学を専攻。学部時代にフラダンスを通して、自然と人々の文化の密接なつながりを感じ、環境への関心を持つ。修士論文では原発に伴う福島県産農作物の風評被害の経済損失について分析した。
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