マスメディア、その中でも公共放送として取り組む環境経営とは?NHKの「環境経営事務局」メンバーから直接その活動について話を聞く機会を得ました。
NHK様からのレクチャー後は小グループに分かれて、NHK X 若者アンバサダーによる意見交換会を実施。今後どのような活動を一緒にやっていきたいか等の活発な意見が飛び交いました。
■レクチャーレポート
1.ポイント
- NHK総務局に位置づく「環境経営事務局」にて、環境経営アクションプラン策定や施策を行っている。
- 2025年度末までに東京・渋谷の放送センターでの電力使用によるCO₂排出量相当分をゼロにすることを目指す。
- 各番組の環境負荷見える化+削減を行う「サステナブル制作」という制作概念がヨーロッパを中心に普及。
- 2022年、国連広報センターと「SDGメディア・コンパクト」の加盟メディア有志が共同キャンペーンを実施。
- キャンペーンを通して、メディアの垣根を超えたコンテンツが作られるなど横のつながりが構築された。
- 公共メディアとして職場内外への発信をし続ける。
2.サマリー
①環境経営タスクフォース
NHKでは、CO₂排出量の9割を電力が占めていることから、環境経営アクションプランとして2025年度末までに放送センターでの電力使用によるCO₂排出量をゼロにする目標を立てました。そして2021年7月、NHK内の公募制により「環境経営タスクフォース」というチームを立ち上げ、国内外企業のリサーチや先進企業の視察を行いながら環境意識向上への施策を図るべく、期間限定プロジェクトを開始しました。実際にNHKの一部の放送局に再エネや電動車を導入したり、脱プラや職場内への広報など内部改革に取り組みました。
環境経営タスクフォースの特徴として、国内外で環境問題に関連する取材・報道・企画を経験した人財がいることが挙げられます。各人の経験を持ち寄り、内部向けの勉強会を開催するなど環境に配慮した公共メディアの在り方を模索してきました。
現在は、タスクフォースから環境経営事務局という組織に引き継がれ、持続可能な社会に貢献していくための「実行」フェーズに入っています。
②海外調査
環境経営タスクフォースの取り組みの一環で、海外放送局の調査を実施したところ、主にヨーロッパの主要放送局の施策の中に「環境負荷の見える化・削減」が共通して制定されていることが分かりました。これは”制作における全過程の環境負荷に責任を持つ”ことであり、メディアの主力商品であるコンテンツの制作におけるすべての部分で、環境視点を加えた取り組みを行うことを指します。これらの取り組みは「サステナブル制作」という概念として欧米中心に広がっています。
実際に先駆的な取り組みを行っているイギリスの放送局の徹底した取り組みを調査した乾様は、「目標・方向性を示すこと」「メディアのポテンシャルを自分達自身が信じること」「職員の意識醸成」などの大切さを教えられたと言います。
③メディアの垣根を超えた共同キャンペーン
2022年、国連広報センターと「国連SDGメディア・コンパクト」に加盟するNHKをはじめとするテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、オンラインメディア等の140社以上のメディア有志が「1.5℃の約束-今すぐ動こう、気温上昇を止めるために。」というスローガンのもと、メディアを通して気候変動対策のアクションを呼びかけるキャンペーンを行いました(9月~11月がキャンペーン強化期間)。NHKと民放キー局は6局連動でこのキャンペーンの一環として、動画を共同制作したり、NHKのスタジオに民放キー局のキャスター、科学者、若者代表が集い、気候変動について一緒に考え、アクションにつなげるスペシャル番組を放送しました。このスペシャル番組では、番組制作に関連して排出されるCO₂排出量のデータ収集も行い原因分析および今後の課題を探りました。
「NHKの環境経営をどう発信するか」という課題にも直面しています。現在テレビだけでなくソーシャルメディアを使い、環境に関連したコンテンツの発信を行っています。さらに、NHKが事業者としてどのような環境対策を実施しているかも発信しています。アクセス数の不振や伝え方など難しい問題に向き合いながら、NHKは公共メディアとしての役割を模索し続けています。
3.感想
NHK様の徹底された環境への取り組みを学んだことで、NHK様の陰の努力や直面する課題を知ることができたため、とても濃く印象に残る意見交換会となりました。民間放送局とは違う特徴として、公共放送であるため視聴者が受信料を払い、放送局がその受信料でコンテンツを作るという、分かりやすいコンテンツ制作の流れがあります。環境視点を盛り込んだコンテンツを作るには、私たち視聴者側も自分たちが何を知りたい・見たいか考え、放送局へ声を届け、制作してもらうといった良い循環が必要だと思います。
またアンバサダーとの意見交換の時間では、NHK様のビジョンや取り組みへの疑問をディスカッションしつつ、既存コンテンツに環境視点を取り入れるアイデアや多世代が参加できる番組を新たに作りたいといった要望など、ユニークで新しい意見が出ました。
環境問題とメディアの関係は密接であり繊細なものですが、時代の流れも変わり必要なことや真実が目の前にある中、メディアと視聴者も環境問題に関わる身としてお互いにまずは行動していかなければならないと感じました。
環境問題がもっと身近にフラットに学べるメディアが増えるよう、私自身も注意深く情報収集しながら自身の意識と姿勢に向き合っていきたいと思います。
4.同世代に伝えたい点
- メディアの裏側を学び、視聴者側の意識や姿勢を変えることも大切。
- メディアを変えるには、声を届け続ける。
【講師】
海法 昻氏
総務局 環境経営事務局
乾 多恵氏
総務局 環境経営事務局
林恵里佳氏
総務局 環境経営事務局 エキスパート

【レポート執筆】
前島 奈緒子さん/ 第2期若者アンバサダー
創価大学にて環境経営を研究。その中でも特に「⾷と農」に関⼼を寄せ、環境問題を課題ではなく可能性として解決に向けたいと考えている。