2023年3月30日にジェンダーダイバーシティプロジェクトと気候変動プロジェクトの一環として、若者アンバサダーとジェンカレ(https://gencollege.org/)がJFEスチール東日本製鉄所(千葉地区)を視察しました。CO2排出が多い産業として100年後も鉄を使い続けるための「革新的新技術を通じて2050年までにカーボンニュートラル」に向けた取り組みやビジョンについて意見交換を実施しました。また同社のダイバーシティー推進に向けた採用、教育、育休についてなどの様々なトピックについても意見を交わしました。
■レクチャーレポート
1.ポイント
・地球の1/3は「鉄」。
・環境調和と地域共生の両者を実現する都市型製鉄所。
・今後も問われ続ける鉄の価値と「サス鉄ナブル」の社会を実現するためには。

2.JFEスチール東日本製鉄所(千葉地区)視察&意見交換会の概要
満開の桜並木に出迎えられ、3/30に千葉県千葉市中央区にあるJFEスチール東日本製鉄所(千葉地区)の視察・意見交換会へ行ってきました。まず、見学センターにて会社概要を説明いただき、生産ラインの解説ビデオを視聴しました。東京ドーム約170個分の広大な敷地では、省資源・省力化を実現する都市型製鉄所として様々な設備を構えていました。中でも熱間圧延工場にあるエンドレス圧延プロセスは日本が誇る技術です。
その後、ヘルメットやトランシーバーを装着し作業着に着替えてから、担当者から丁寧な説明を受けながら回るプラントツアーへ。まず目に入ってきたのは25mプール約280杯分の2つの大きなガスタンクです。そしてすぐに建設中の工場創立70周年記念公園や隙間なく植えられた街路樹が見られ、製鉄所というより大きな自然公園の中に来た感覚でした。緑の中を抜けると、いよいよ原料運搬船 から降ろされた赤茶色の鉄鉱石、黒色の石炭、白色の石灰石の山々がありそれらを運搬する特殊大型重機やベルトコンベアが見られました。
千葉地区では、鉄は1日およそ1万トン製造され、普通車で約20台分の鋼の塊が次々と圧延工程に送られていきます。ツアーでは加熱炉から出てくる真っ赤な鋼の塊や、それを冷却水で温度調整しながら何段ものロールで連続的に圧延したり、トイレットペーパーのように巻き取りコイル状にしたりする様子も見学しました。圧延された鋼板は時間が経ち色は銀色になっているものの、遠くから見ても陽炎が見えるほど熱は冷めていない光景も見られました。
プラントツアーを終えて、見学センターに戻り最後は意見交換会。様々な角度からの質疑に対応するためJFEスチールから多数の担当者に参加していただきました。
まず、『企業理念である「JFEグループは、常に世界最高の技術をもって社会に貢献します。」と紐づいて、社員にESGの活動を浸透するために取り組んでいることはあるか。また実際にどの程度認識が浸透している状況か。』という質問に対する回答を通して、JFEスチールでは「ESGとは?」等を社内報にて発信し、CSRやコンプライアンスについては社内研修等で対応していることが分かりました。
また、『CMで印象的な“サス鉄ナブル”という言葉があるが、今後100年における鉄の価値がどう変容し同社がどう対応していくのか、長期ビジョンがあれば教えてほしい。』という質問には、JFEスチールはこれまでの文明を支えてきたように未来永劫、求められる鉄の価値をこれからも大切にして、100年後も社会の基盤になるためにはカーボンリサイクル高炉等の超革新技術開発を含めた環境経営ビジョン2050を進めていくつもりであること、そして足元では既存の生産ラインに省エネ技術を導入するなどの対策を講じているとの回答をいただきました。
そして、ジェンダーダイバーシティ関連の質疑応答では、「女性やLGBTも含め、社員への学びの機会を提供しているか、また自分事としてもらうために工夫していることは?」という質問に対しては、LGBTも含め講師を招いて学びの場をもっていること、また女性のライフステージごとの課題を調査し、一般社員とともに上司も女性の健康セミナーに参加することで職場全体に理解を広げており、さまざまな人たちにとって働きやすい職場環境となるよう対策を講じていることがわかりました。 また、「女性が働きにくさを感じたときに、どのように意見を拾って現場にフィードバックしているのか」という質問に対して、技術系の女性社員は「人事部門と各年代の社員が面談する機会を作っており、課題をしっかりと拾い上げ、解決策を検討してフィードバックしている」と回答しました。人事部だけでなく、いろいろな部署が解決に向けて意見を出せる仕組みづくりに期待したいです。


3.感想
製鉄所は暑い、ガス臭い、煤や錆だらけというイメージを持っていましたが 、一瞬公園に来たと錯覚するほど桜が各所に咲き、緑が多いところでした。バスの車内からはキジも確認できました。一方で普段見ることの無いトピードカーという特殊車両や石炭、鉄鉱石、石灰石の山など製鉄所らしい光景も目にしました。
また、工場見学後に行われた意見交換会では製鉄のゼロエミ、ジェンダーダイバーシティについて活発な対話を通じて様々な観点から学ぶことが出来ました。製鉄のゼロエミに関しては、製鉄所は言うまでもなく、CO2や工業排水の排出率が高くなりますが、今回視察したJFEスチール東日本製鉄所(千葉地区)様は地域共生と環境調和の両面に取り組む日本で例が少ない都市型製鉄所として、日々鉄鋼を作り続けていると感じました。日本の製鉄を代表する企業として一日でも早く様々な角度からアプローチした超革新技術を導入し、世界初のECO製鉄所と呼ばれる日が来ることが楽しみです。そして、ゼロカーボンと併せてダイバーシティ経営にも期待したいと思います。
最後になりましたが今回私たちを受け入れてくださり、当日は工場案内や対話に丁寧かつ誠実に対応して頂いたJFEスチールの皆様に厚く御礼申し上げます。
4.同世代に伝えたい点
・2050年までに超革新技術を千葉地区で開発&ビルドインする。
・私たちの暮らしに密着した鉄づくりで社会に貢献。
・製鉄所にはグリーンなイメージを抱ける。

【レポート執筆】
佐々原 悠馬/第2期若者アンバサダー
同志社大学政策学部在学中。自身の存在によって、市⺠と企業、⾏政をつなぎ市⺠の環境に対する意識変容を起こそうとアクティブに活動する同志社大学生。