【はじめに】共創パートナープログラムとは?
共創パートナープログラムは、DO!NUTS TOKYO若者アンバサダーと企業とが、対話を重ねたうえで、若者アンバサダーが企業の課題に対するアイデアの共創活動を行っていくプログラムです。
今年度のプログラムの一つ目は、プラチナ構想ネットワーク様との「若者が行列を作って就職したくなる林業採用を考える」というテーマです。
プラチナ構想ネットワークには165の法人、また220の自治体首長や大学教授などが会員として名を連ねています。
地球が持続し、豊かですべての人の自己実現を可能にする社会=プラチナ社会の実現を目指し、活動をしている中でこのままでは2030カーボンハーフ、2050カーボンゼロが間に合わないという危機感を持ち、社会のコンセンサスを取るためには若者の発想と力が不可欠ということで、今回共創パートナーとしてDO!NUTS TOKYOとプログラムを進めていくことになりました。
プラチナ構想ネットワークと一緒に林業を取り巻く状況を学び、持続可能な林業や若者にとって魅力的な林業についてのアイデアを創出していく予定です。
2024年11月29日(金)にプラチナ構想ネットワークの小林端尚氏より、林業の現状や各地域を守る森林資源フル活用の全体像についてご講義いただき、若者アンバサダーとの意見交換を行いました。
■レクチャーレポート
1.ポイント
・希薄になってしまった「里山・山林との関係」
・木造住宅や紙の需要低下と、別の需要創出の必要性
・地域で育てた樹木を地域で使う地域循環型の林業
・林業を「憧れの職業」に
2.サマリー
脱炭素時代において、二酸化炭素の排出を抑えることと同時に、二酸化炭素の吸収を高めていくことが重要です。樹木はその役割を担いますが、高い吸収力を保つためには、樹木の吸収力が低下する40年を目処に、定期的に木を間伐したり、植え替える必要があり、林業がこれを担っています。
そして、その際に排出される間伐材の需要をどのように形成し、どのように木を循環させるかが課題となっています。
木材に対する需要の低下は、化石燃料が大量に輸入されたことと、その影響で間伐を必要としない広葉樹を管理していた組合(薪炭組合)がなくなってしまったこと等が背景にあります。以降、木造住宅や紙の需要が低下し、今後も増加の見通しが立てられないことから、林業の現場では今までとは異なる需要を創出するという課題を抱えています。また、そうした国内林業の弱体化と同時に、ヨーロッパや北米から輸入される安い材木が、さらに国内の木材需要を低下させています。
こうした課題に対する解決策として、プラチナ構想ネットワークでは「地域で育てた樹木を地域で使っていく」という地域循環を目指す取り組みを行っています。地域で使う理由としては、樹木が二酸化炭素を吸収してくれる一方で木材を遠方まで輸送してしまうと、それを相殺するほどのCO2を排出してしまう為です。
取り組みの一つに、熱供給事業があります。この事業は、建築用材にならなかった間伐材などを木質バイオマスチップにし、それを燃やして温水や蒸気を供給する事業で、間伐材を廃棄せずに循環させることができます。石油に代替するエネルギー源として、供給することを目指しています。
その他にも、オフィスビルや都市部の非住宅の木造化の推進、山の価値を証券化し金融商品として売買したりと、取り組みは多岐に渡り、画期的に展開されています。
一方で、日本の林業は若者にあまり注目されていません。オーストリアでは林業は若者にとって憧れであり、儲かる職業ですが、日本は自然資源が豊であるにもかかわらず、林業への就職に魅力を感じている若者は多くはないのが現状です。
3.感想
東京での暮らしの中では、自分たちが排出する二酸化炭素を吸収してくれる樹木について考えることが滅多にありません。ビルに囲まれた都市部で生活をしていると、冒頭にもあったように、「里山・山林との関係性」は希薄になってしまいます。その為、講義の内容は、日常では考えないことや新しい発見ばかりでした。
今回の講義を通じて、いかに林業含む第一次産業の現状に対する認識の浅はかさを痛感しました。そして、私のように、林業を持続する重要性について認知できていない人が多いのではないかとも感じました。林業と一般消費者とのコミュニケーション間における課題の中に、今回のテーマとなる雇用問題があると考えています。林業に対して「憧れの職業」という認識を持ってもらえるよう、今後、共創対話を通じて解決策となるアイデアを創出していきたいと思います。
同世代に伝えたいこと
・林業は魅力がないわけじゃなくて、知られていないだけ。
・自分の当たり前の生活を支えてくれている「見えない仕事」にも目を向けてみませんか?

【レポート執筆】
鈴木あかりさん/ 第4期若者アンバサダー
東京都出身。青山学院大学総合文化政策学部のフェアトレードラボでのフェアトレードの啓発活動を機に、社会課題と消費者の行動認知、その創造・変容に興味をもつ。現在は空間デザイン会社に勤務。

【講師】
小林端尚 氏/プラチナ構想ネットワーク プラチナ森林産業イニシアティブ 森林・林業分科会 リーダー
早稲田大学理工学部にて燃料化学を専攻し、卒業後は日興証券株式会社にてアナリスト、三菱総合研究所にて住環境事業部やマーケティング戦略研究部を経たのち、三菱総研のベンチャー支援制度を用いて2001年 株式会社アルファフォーラムを設立。
三菱総研で木材事業に携わっていたことをきっかけに、2012年からプラチナ構想ネットワークのスマート林業WG事務局の主任を務める。
2017年にはもりもりバイオマス株式会社にて熱供給事業を進める。
2023年から、プラチナ構想ネットワークの現職に就任。
現在は富山県に在住し、森林資源フル活用プロジェクトに携わる。