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2025年12月1日 12:35

パイプライン様×若者アンバサダー 第2回共創対話

11月19日に実施した、パイプライン様と若者アンバサダーによる第2回共創対話の内容をお届けします。
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1)ポイント

• 「環境に良いから買う」よりも、まず“デザイン・手触り・物語性”などの「使いたくなる魅力」をつくることが重要。

• 購入はモノの消費ではなく、ストーリー共有やコミュニティへの参加といった社会的体験として機能し、ブランド価値は世界観や体験設計によって形成される。

• 環境訴求を押し出すだけの手法は限界があり、“気づけば環境行動につながっていた”という自然なナッジ設計が求められる。

• 回収・再資源化には心理・経済・物理の障壁が存在し、透明な情報提供や返却しやすい仕組みなど、行動を支える設計が不可欠。

• 初期フェーズでは、価値観を共有するコミュニティや若年層のSNS発信・ギフト文化を起点とした浸透戦略が効果的。

2)サマリー

今回の定例会では、「環境配慮型バッグの循環型エコシステム構築」をテーマに、アンバサダーが各自の興味関心に従いリサーチした内容を共有した。共通して見えてきたのは、「環境に良いから」と意識して行動するのではなく、使っているうちに自然と環境配慮につながっていた、という流れを生み出したいという点だった。

河原さんからは、まず「持っていて心地よい」ことが大切だという提案があり、手触りや経年変化といった情緒的な価値がバッグへの愛着を育て、環境配慮を押し出さなくても結果的に行動につながるのではないかという視点が示された。また、購買行動そのものが、共感や価値観の共有、コミュニティへの参加という社会的行為になっている点が議論された。特に若者においては、SNS上でのストーリー共有、友人経由での口コミが強い影響力を持つ。

中川さんからは、物語・関係性・共感・共創を重視する購入者にとって、購入で終わらないクラブ的な体験や、同じ価値観のファン同士がつながるネットワーク設計が重要であり、ブランドをモノではなく「ネットワーク」として捉えるべきだという問題提起があった。

大村さんは、回収・再資源化の段階には「心理的・経済的・物理的」な三つの障壁があることを整理し、デポジット制度やTerraCycleの事例を紹介しながら、循環を製品単体ではなく社会システムとして捉える必要性を強調した。

さらに、佐々木さんからは、使用後のバッグをどのように回収・再資源化していくかという視点から、循環プロセスをユーザーに「見える化」することの重要性が共有された。また、環境団体・海ごみコミュニティ・マリンスポーツ系サークルなどコアな中間集団にまず使ってもらい、その口コミやアイデンティティを通じて循環の輪を広げていくアプローチが提案された。また、「持つことで自分の価値観を表現できる商品」という観点も重要性が示された。

宮川さんからは、一般消費者にとっては、環境に良いという理由よりも「自分が好きだから」「かっこいい/可愛い」といった内発的な動機の方が、行動が続きやすいという指摘があった。Allbirds や Liquid Death の事例を挙げながら、環境性を背景に持ちつつもデザイン性や世界観で自己表現欲求に応える“マウント商品”的な価値づけが行動変容を促しやすいという知見が共有された。

最後に、アンバサダー全員が実際にバッグを使用した感想も共有され、とくにタグがストーリーの入り口として機能する点、紙袋に近い見た目にも関わらず非常に丈夫である点などが挙げられた。自身が使ってみて実感したことを活かしながら、今後アイデアブラッシュアップを進めていく方針が共有された。

3)感想

今回の定例会を通して印象的だったのは、環境配慮型プロダクトが「環境」だけでは語れない領域に来ているという点である。素材や技術の良さよりも、どう使われ、どのように関係性を生み、どんな物語を共有できるかが重視されるという視点は、これからの循環型デザインにおいて必須だと感じた。

また、循環の成立にはユーザーの心理や行動特性が大きく影響しているため、制度・インセンティブ・デザインの複合的なアプローチが不可欠である点も大きな学びとなった。特に、自然と行動を促すナッジ型のデザインや、コミュニティを起点とした浸透戦略などは、若い世代の価値観と整合性が高いと感じる。

全体として、循環型バッグづくりは素材開発だけでなく、行動のデザイン・体験の設計・価値観の共有という幅広い視点の統合が必要であるという理解が深まった。

4)同世代に伝えたい点

  •  “欲しいから使っていたら、結果的に環境にもよかった”となる消費行動が続けやすいのではないか。
  • 商品の価値はモノそのものに加えて、背景の物語やコミュニティとのつながりに宿る。
  • SNS時代では、ひとつの投稿や口コミが大きな広がりを生むため、身近な行動が循環の出発点になりうる。
  • 長く使えるもの・直して使えるものを選ぶ姿勢は、結果的に最も強い環境行動になる。
  • 循環を成立させるのは技術だけでなく、人の行動と心理を理解したデザインである。


【レポート執筆】
河原永昌さん/ 第5期若者アンバサダー

三重県志摩市出身。中高で寄生バチ研究に取り組み、「三重生物研究発表会」最優秀賞、内閣総理大臣賞、ISEF2022動物科学部門世界3位などを受賞。文科大臣表彰や各自治体の功労者表彰も受けた。現在は慶應義塾大学環境情報学部で学びつつ、地元で行政・企業と連携した海洋課題の実証実験プロジェクトを推進している。

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