2025年7月16日に若者アンバサダーによる大手家電流通協会様へのアイデア提案会を実施しました。家電量販店が持つリアルな体験の場という強みを活かしながら、リユースの推進やサーキュラーエコノミーの実装、店舗の価値転換に向けて双方向からの意見交換を行い、若者世代の視点から新たな可能性を共有しました。また、リユースへの抵抗感をワクワクする体験で変えていく提案や、暮らしに溶け込むサステナブルな選択肢づくりについて、多角的な視点から議論を深めました。
■レクチャーレポート
1.ポイント
・家電量販店のリユース推進において、「これ好き!」「使ってみたい!」というワクワクから始まる選択が重要
・EC時代における店舗の役割を、商品を売る場から「価値を感じる場」へと転換
・「暮らし体験ブース」「Re:Connect Café」「VRライド」など、家電量販店の強みであるリアルな体験の場を最大限活かすアイデアを提案
2.サマリー
今回のアイデア提案会では、「家電量販店を拠点とする家電のリユースが若者を中心に社会に広がる仕組みづくり」という課題に対し、3つのアイデアを提示しました。
◆ 提案1:暮らしを魅せる売場づくり (第3期アンバサダー 荒武 伸仁)
家電売り場を「買う場所」から「体験する場所」に転換するという視点で、20〜30歳代の女性を中心に、色やデザインに敏感な層に向けて「共感」と「リアルな憧れ」を刺激するアイデアを提案しました。
まず、顧客が希望するインテリアスタイル(北欧・シンプルナチュラルなど)に沿った家電を展示します。さらに、SNS発信力の高い店舗スタッフが家電を利用した具体的な暮らしのイメージを発信し、実際に接客やアドバイスを行うことで、顧客自身が自分の部屋で家電を使用した具体的なイメージの喚起や、生ごみ処理機を活用した家庭菜園体験など、サーキュラーエコノミーへの貢献をその場で体験できる仕組みなども盛り込みました。

◆ 提案2:Re:Connect Café(第4期アンバサダー 島田 夢)
家電量販店の一角に、リユース家電が利用できる休憩スペースを設置する企画。単なる展示ではなく、「体験を通じて先入観を変える」ことを目的に、Z世代が求める意味や物語性を盛り込んだ設計が特徴。各家電には「元の持ち主のストーリーカード」が添えられ、“モノが生きてきた時間”を感じながら利用できる。また、学生による空間デザイン参加やイベント企画により、「来るだけで面白い」「自分も参加したい」空間を目指しています。

◆ 提案3:家電リユースVRライド(第3期アンバサダー 井山 裕太郎)
リユース家電の工程(買取→輸送→分解→洗浄→検査→販売)を、家電の視点でジェットコースターのように体験できるVRアトラクションの提案。
この仕組みは、リユースに対する漠然とした不安を、ポジティブなストーリーとワクワクする体験で打ち消すと同時に、家電量販店の強みであるリアルな体験の場を最大限活かす構成です。若年層の初期ライフイベント(引っ越し、進学、一人暮らし)と親和性が高く、教育的価値もあるため、自治体や学校との連携の可能性も視野に入れた提案となりました。

3.提案した感想
・荒武さん
今回のアイデア提案を通じて改めて資源循環の価値訴求の難しさ、若者がどういうところに価値を感じているのか知れる良い機会でした。リユース工場での見学も貴重なお話をお聞きできたので良かったです。
・島田さん
今回のアイデア提案会に参加して、一番強く感じたのは、「体験を通じてこそ、価値観は動く」ということでした。それまでの私は、リユース家電に少し抵抗感があって、「誰が使っていたのか分からないし、本当に清潔なのかな?」と、どこかで中古=古くてちょっと不安なものというイメージを持っていました。しかし、実際にリユースの現場を見て、その考えは大きく変わりました。プロの技術で丁寧に洗浄・整備されて、見た目も中身もまるで新品のように生まれ変わっていく家電。その姿は、「もう一度、誰かの暮らしの中で役立つために整えられているモノ」として、すごく前向きにそして美しく見えました。ただモノを売るという発想ではなく、誰かの暮らしを、次の誰かへつないでいくという循環のあたたかさが、そこには確かにありました。
そんな中で私が提案したのが、「Re:Connect Café」です。これは、ただ展示された家電を眺めるだけではなく、「実際に使ってみることで先入観を変える場をつくりたい」という思いから生まれた企画です。特に大切にしたのは、家電ひとつひとつにストーリーを与えること。たとえば、「この炊飯器は、ひとり暮らしを始めた大学生が毎日使っていました」といった元の持ち主の背景をストーリーカードとして添えることで、モノに命が宿るような感覚を生み出したいと考えました。実際に提案したあと、「それ面白いね」「共感できる」といった反応をいただけたことで、自分の思いや視点が誰かに届いたという実感があり、とても嬉しかったです。
提案された他の2つのアイデア「暮らしを魅せる売場」や「VRライド」も、「楽しそう!」「体験してみたい!」と思えるものばかりで、「サステナブルをどう楽しく伝えるか?」という問いに対する可能性を感じました。サーキュラーエコノミーという言葉は少し堅く聞こえるかもしれませんが、こうしてリアルな体験を通じて出会えば、きっと誰もが「これは自分ゴト」と思える。そのきっかけを、身近な場所で、自然な形で届けられるのが家電量販店という空間なのだと、今回の経験を通して強く感じました。
・井山さん
今回のアイデア提案を通じて、家電量販店業界ならではの経営課題や、サステナビリティへの具体的な取り組みを知ることができ、今後の活動の糧となる大変有意義な時間となりました。特に、実際にリユース工場を見学したことで、リユース家電に対して抵抗感を持っていた私自身の価値観が180°変わり、次回の家電購入時には、積極的にリユース家電を選択肢に加えたいと自然に思えたことには、自分でも驚かされました。こうした実体験を踏まえ、消費者一人ひとりにサステナブルな行動変容を促すためには、「感動を伴う体験価値の提供」が重要であるという考えに至っています。
4.同世代に伝えたいこと
私たちは、選ぶという行為で未来を変えられます。たとえば、リユース家電を選ぶこともそのひとつ。でも、環境のために我慢ではなくて、「これ好き!」「使ってみたい!」というワクワクから始まる選択でもいいと思います。
今回提案されたような仕掛けを通じて、モノの裏にあるストーリーや誰かの想いを感じながら、自分なりのスタイルでサステナブルを楽しむことが、これからの時代の当たり前になっていくと思います。
「家電を通じて、誰かとつながる」「使うことで、未来にやさしくなれる」そんな選択肢が身近にあれば、もっと多くの人がリユースを前向きに受け入れられる。私たち若者の共感と行動が、そのスタートラインに立っていると実感しました。

○関連リンク
大手家電流通協会✖️若者アンバサダー共創対話
一般社団法人大手家電流通協会
開催レポート執筆
第4期アンバサダー 島田夢