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2025年4月28日 10:10

大手家電流通協会×若者アンバサダー 共創対話

2025年1月24日に大手家電流通協会様と共創対話を実施しました
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【はじめに】共創パートナープログラムとは?
共創パートナープログラムは、DO!NUTS TOKYO若者アンバサダーと企業とが、対話を重ねたうえで、若者アンバサダーが企業の課題に対するアイデアの共創活動を行っていくプログラムです。
大手家電流通協会様とは「家電量販店を拠点とする家電のリユースが、若者を中心に社会へ広がるようなアイデアを考えていく」というテーマで若者アンバサダーメンバーがZ世代らしい自由なアイデアを創出し、その後アイデアのブラッシュアップを経てビジネス実装の下地作りまでを目指します。

大手家電流通協会様との共創は、事務局長様がDO!NUTS TOKYOの第2回 アイデアピッチにて斬新で活気にあふれた若者アンバサダーによる発表をご覧いただいたことがきっかけとなり、パートナーとしてプログラムにご参加いただけることとなりました。

ご期待に沿えるよう、大手家電流通協会に所属する各企業様の取組や家電のリユースを取り巻く状況をインプット頂き、課題と若者アンバサダーならではの発想をかけ算して業界のサーキュラーエコノミーへとつながるアイデアを創出していく予定です。

2025年1月24日(金)に大手家電流通協会所属の5社様(ヤマダホールディングス、ベイシア電器、ビックカメラ、ケーズホールディングス、上新電機)より、各社の環境取り組みついてご講義いただき、若者アンバサダーとの意見交換を行いました。

レクチャーレポート

1.ポイント


・業界連携による社会課題への挑戦
 大手家電量販7社が加盟する協会が、業界を超えてカーボンニュートラルや資源循環に取り組む。

・4つの分科会で多角的に環境課題にアプローチ
 情報発信・リサイクル・脱炭素・データ活用という4つの観点から、実効性のある取り組みを展開。

・「2030年GHG排出量(Scope1,2)を2013年度比50%削減」という明確なコミットメント
 2013年度比で50%削減を目指し、具体的な中間目標を設定。気候変動対策の本気度を示す。

・各社の独自ノウハウを活かし、取り組みを業界全体へ波及
 リユース・リサイクルの実践、ESG評価の向上、再生可能エネルギーの導入など、各社の知見を横展開し、業界全体の底上げを図る。

2.サマリー

大手家電流通協会は、ヤマダホールディングスやビックカメラなど国内大手7社が加盟する団体で、家電販売業界を通じて社会課題の解決に取り組んでいます。特に環境分野では、情報発信・リサイクル・脱炭素・データ活用の4つの分科会を設け、業界横断的に知見を共有しながら、持続可能な社会の実現を目指しています。協会は2030年までに、2021年度比でGHG排出量を42%削減するという中間目標を掲げ、カーボンニュートラルを目指した多角的な取り組みを進行中です。また、サーキュラーエコノミーの推進や、消費者への環境情報の可視化にも力を入れており、各加盟企業も独自の強みを活かして環境対策を展開。たとえば、ヤマダホールディングスは「使える家電の再販売」、ビックカメラは「リサイクル工場ツアー」など、消費者との接点を活かした啓発活動を行っています。こうした取り組みは、単なる企業イメージの向上にとどまらず、「使う」から「再び活かす」へとつなげる循環型社会の構築を目指すものです。業界全体で協業することで、より大きな社会的インパクトを生み出そうとしています。


その一方で、家電の処分方法が消費者に十分伝わっていないという課題も浮き彫りになっています。使用済みの小型家電は、従来から家庭ゴミとして自治体が回収を行っていますが、小型家電リサイクル制度の整備により民間企業も回収に参入できるようになり、今では一部の家電量販店でも回収を行っています。また、一部の自治体では人員不足などから十分な回収体制が整っていないケースもあり、そうした地域では近隣の家電量販店がサポートするなど、自治体と連携した対応が進められているものの、小型家電の処分方法について消費者の認知度はまだまだ低いのが現状です。こうした歴史と取り組みを踏まえ、今後はより一層、消費者に対する情報発信と利便性向上が求められています。企業だけでなく、私たち消費者一人ひとりも、日々の行動を見直すことで、より良い循環型社会の実現に寄与できるのではないでしょうか。


各社の環境への取組


1.ヤマダホールディングス
•「家電は資源」の理念のもと、リユース・リサイクルを推進。
•使える家電はクリーニング・修理し、アウトレット店舗やECサイトで再販売(最大24ヶ月保証)。
•使えない家電はリサイクルへ。特定家電はメーカーで解体・再資源化、小型家電は自社リサイクルプラントで処理。
•サステナビリティ情報を公式HPで公開。

2.ベイシア電器
•ゲオやブックオフと連携し、携帯・PC・ゲームのリユースを推進。
•太陽光発電パネル導入、LED照明への切り替えを加速。
•ドコモショップやauショップでリユース携帯を販売。

3.ビックカメラ
•「サーキュラーエコノミーの確立」を中期経営計画の柱に据え、持続可能なビジネスへ移行。
•コーポレートPPAを順次導入し、店舗の温室効果ガス実質0(RE100)化を実施。
•中古品の買取促進により、中古市場拡大に伴う製品再利用化への貢献。

4.ケーズホールディングス
•家電リサイクル法、小型家電リサイクル法に基づく回収を実施。
•小型充電池・ボタン電池の回収活動も推進。
•不法投棄問題に直面し、メーカー・自治体との連携の必要性を強調。

5.上新電機
•「グリーンスマイルチャレンジ2050」を掲げ、カーボンニュートラルや資源循環の取り組みを強化。
•環境配慮型商品の販売拡大、太陽光発電・蓄電池の推進。
•CDP気候変動プログラムでAスコア獲得、ESG投資指標にも選定。


アンバサダーからの質問

Q1. 2022年のタイミングで社団法人化したきっかけは?
→以前から任意団体として活動していたが、業界団体としての発言力を高め家電流通業界の更なる発展を目指すため。

Q2. 大手家電量販企業で協業するメリットは?
→特に2014年からの取り組みを皮切りに、カーボンニュートラル対応や物流2020年問題など、業界全体で取り組むべき社会的課題に対し、共同で議論・対応してきました。こうした取り組みを通じて、「勉強会」や「情報共有の場」が生まれ、業界としての一体感や発信力が高まったことは大きなメリットの一つ。家電業界は店舗の立地や価格面で激しく競合することが多いが、このような場があることで、将来を見据えた持続可能なビジネスの在り方について真剣に議論する機会が増えた。2020年以降は特に活動が活発化し、カーボンニュートラルの実現に向けて業界を挙げた取り組みが進められている。各社の持つノウハウを共有し合うことで、個社では解決できない課題に対する相乗効果も生まれ、社会課題の解決に向けた重要なステップとなっている。

Q3. 「小型家電リサイクル法」の回収率を単純な数式で出すのが難しい理由は?
→回収対象が「本体」だけとは限らない

例)スマホ本体を出さずに、ACアダプターだけ出した人も1個とカウントされる。一方で、スマホ+充電器+イヤホンのセットを出しても「1個」とカウントされるケースもある。

⇒ 「何を1個とするか」が一律ではなく、「販売個数」と「回収個数」が単純比較できないため正確な回収率の「数式」は難しい

小型家電リサイクル法とは?
2013年に施行された法律。家庭から出る小型家電(スマホ・ドライヤー・デジカメ・ACアダプターなど)に含まれるレアメタルなどの資源を有効活用するため、回収とリサイクルを促進する制度。市区町村や家電量販店、郵便回収など多様な方法で回収されている。
3.感想


今回の対話を通じて、小型家電リサイクル法の回収率を正確に算出することの難しさに驚きました。単純に「販売数と回収数を比較すればよい」というものではなく、回収される製品の形態や自治体ごとの回収基準の違いが影響し、統一的な指標を定めることが難しいという点は、新たな気づきとなりました。また、環境配慮の観点からは、不法投棄の問題にも目を向ける必要があると感じました。適切なリサイクルが進まない要因の一つとして、消費者の回収拠点へのアクセスのしづらさや、処分の手間が関係している可能性があります。これを解決するには、単に法制度を整備するだけではなく、消費者の利便性を考慮した回収システムの構築や、企業・自治体の連携強化が求められます。家電業界全体で環境負荷の低減に取り組む姿勢は、持続可能な社会を実現する上で重要なステップです。今後、回収率の向上や不法投棄の抑制に向けた施策がどのように進んでいくのか、引き続き注目していきたいと思います。

同世代に伝えたいこと


私たちの世代は、便利な家電製品に囲まれて生活していますが、その裏で「使い終わった後の処理」について考える機会は少ないかもしれません。しかし、今回の対話を通じて、小型家電のリサイクルや不法投棄の問題は、決して他人事ではないと実感しました。例えば、スマートフォンやドライヤーなどの小型家電は、適切にリサイクルすれば貴重な資源として再利用できますが、現状ではまだ回収が十分に進んでいません。また、手間がかかるからといって不法投棄されるケースもあり、環境への悪影響が懸念されています。こうした問題を解決するには、企業や自治体の努力だけでなく、私たち一人ひとりの行動も重要です。使わなくなった家電を適切な方法で処分する、リサイクル拠点を調べて活用する、環境に配慮した製品を選ぶなど、できることは意外と多いのではないでしょうか。これからの時代は、「買うとき」だけでなく、「捨てるとき」にも責任を持つことが求められます。私たち自身が環境問題を身近な課題として捉え、行動を変えていくことが、より持続可能な未来につながるのだと思います。

【レポート執筆】
島田夢さん/ 第4期若者アンバサダー

青山学院大学総合文化政策学部に在籍中。フェアトレードの普及を目指す「フェアトレード・ラボ」で啓発活動に取り組んだ経験を持ち、現在は気候変動、地域創生、再生可能エネルギーなど幅広い分野に関心を寄せている。自身のアイデアと行動力を活かし、社会にポジティブな変化をもたらすことを目指している。