若者アンバサダープログラムの学びシリーズ第8回目、今回はレクチャー動画と若者アンバサダーによるレポートをお届けします。
「学びシリーズ」は、DO!NUTS TOKYO公式アンバサダーの皆さんに向けて行われるレクチャーであり、若者アンバサダーとして活動を行っていただく上で参考になると思われる知識の習得や、ご自身の考えをより深めていただくことを目的としています。
第8回目は、2021年9月17日(金)に、DO!NUTS TOKYOのアドバイザーであり、同志社大学 政策学部・総合政策科学研究科 教授の大和田順子氏を講師にお迎えし、「SDGsを活かした地域づくり~都市農村交流を中心に~」をテーマに開催しました。
レクチャー後は振り返りとして、グループディスカッションを行い、活発な意見交換が行われました。
■レクチャー動画
■レクチャーレポート
1.ポイント
- 私たちの暮らしは農山漁村に支えられている。
- SDGsの基盤も、農山漁村にある。
- 農山漁村は、固有の農林漁業・文化を伝承している。
- 農山漁村のかつての持続可能な社会の歴史・英知は、私たちに生きる知恵を与えてくれる。
- 椎葉村の焼畑は、30年サイクルの合理的な循環型農法である。
- 世界農業遺産(GIAHS)の認定は、伝統・文化などの暗黙知を、文章などの形式知にするきっかけとなっている。
2.サマリー
国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成は、世界共通の課題です。しかし、私たち一消費者が自分事のようにSDGsに取り組むためには、どうしたらいいのでしょうか?今回は、SDGsを生かした地域づくりを学ぶための都市農村交流、その入り口を教えていただきました。
現在は、SDGsウエディングケーキモデルの基盤となっている農山漁村(自然資本)がとても気になっている、という大和田先生。この関心は、先生の多様な経験と数多くのプロジェクトデザインから生まれています。
先生は20代でごみ問題や企業市民などに関心をもち、東急百貨店・東急総合研究所にて『百貨店人のためのエコロジーハンドブック』を自主的に制作・配布しました。30代では、“The body Shop”を創業したアニータ・ロディックに影響を受け、化粧品の動物実験反対運動をはじめとした社会変革キャンペーンを国内で主催しました。また、40代では、健康と環境をつなぐLifestyles of Health and Sustainability(LOHAS/ロハス)会議に参加し、日本で初めてLOHASを紹介する人となります。50代で日本全国の農山村の地域資源を活用したコミュニティビジネスを取材し単著『アグリ・コミュニティビジネス』を上梓されました。10年の間、各地の農山漁村のプロジェクトデザインに取り組んでいらっしゃいます。2014年から6年間、農林水産省「世界農業遺産等専門家会議」委員を務められたそうです。
このような数多くのご経験を結び付ける、すなわち”connecting the dots”をすると、先生の現在の関心である「みどりの食料システム戦略」(詳細は第4回レポートを参照)や、グリーンツーリズム・農泊推進対策、定住と観光の間に存在する「関係人口」。そして、食糧農業機関(FAO)によるGIAHS(Globally Important Agricultural Heritage Systems) に繋がっていきます。
GIAHSは、世界的な重要性と、FAOが定める5つの認定基準(①食料及び生計の保障 ②農業生物多様性 ③地域の伝統的な知識システム ④文化・価値観及び社会組織 ⑤ランドスケープ及びシースケープの特徴)、そして保全計画に基づき評価されます。現在、日本には11の認定地域があります。第4回のレポートにも認定地域の一つである、静岡県掛川周辺地域の静岡の茶草場農法が紹介されています。
宮崎県高千穂郷・椎葉山地域の山間地農林業複合システムも、GIAHSに認定されている一つです。その地域の中でも、特に椎葉村の伝統的な焼畑農業は、長きにわたり伝承され、自然の理にかなった農法であるため世界的に評価されています。
椎葉村の焼畑は、約30年のサイクルです。火入れをした1年目からソバ、2年目にヒエやアワ、3年目に小豆、4年目に大豆というように、土壌中の栄養が偏らないように栽培する作物を周期的に変えていく「輪作」をします。ソバやヒエは土壌中の栄養素を消費し、大豆や小豆などのマメ科の作物は土壌を肥やす働きがあります。作物を収穫した後20年~長期の休耕期間を設けて、森林が再生し土壌が十分に回復するのを待ちます。30年経つと、伐採をして次の火入れを行います。
日本民俗学発祥地でもある椎葉村ですが、火入れの前に下記のような唱え言葉で祈りを捧げ、山の神にお神酒を差し上げます。
これよりこのヤボに火を入れ申す。
ヘビ、ワクド、虫けらども早々に立ち退きたまえ。
山の神様、火の神様、どうぞ火の余らぬよう、
また焼き残りのないよう、おん守りやってたもうりもうせ。
大切な農業遺産を次世代に伝えていくために、毎年地元の小学生が焼畑体験学習を行っています。また、焼畑蕎麦苦楽部が焼畑農業の指揮をとり、相互扶助(かちゃーり: 助け合いの精神)のもと、焼畑を後世に継承しています。
3.感想
本レクチャーでは、「意外なつながり」を多く発見できたことに、学習する楽しみを改めて感じました。例えば、第4回目のレクチャー「有機農業が営む生物多様性と地域資源活用」で紹介されていた「みどりの食糧システム戦略」やGIAHSが、SDGsと密接に関わっていることなどです。また、大学1年生のときになんとなく履修した選択科目「民俗学」が、サステナビリティにつながっているとは思ってもみませんでした。
環境問題やSDGsを解決・達成することは、今を生きる私たちに課せられた使命だと思います。しかし、一人の経験や知識から解決することは不可能です。そのため、あらゆるインプットをして、様々な分野の人と協力し合い、大和田先生のご経験のように “connecting the dots“を繰り返すことが重要だと思いました。
今回のような意外なつながりに気付くことが、世の中の複雑に絡み合った問題に自分なりの答えを見出すためのセレンディピティなのかもしれません。これからも、インプットとアウトプットを反芻して、邁進していきたいと強く感じます。
4.同世代に伝えたい点
- 自分だけで解決できない問題は数多ある。だからこそ、椎葉村の相互扶助から学び、解決の糸口を見出してみよう。
- 自分の興味・関心から、様々な経験・挑戦しよう。
- そして、“Connecting the dots”により、分野・立場の垣根を超えて融合し合おう。
- Think Globally, Act locally + “Share Locally & Globally”
- 農村漁村で受け継がれる持続可能な社会の歴史・知恵から学び、関係人口となり、ソーシャルイノベーションを起こしていこう!

【講師】
大和田順子
DO!NUTS TOKYOアドバイザー
同志社大学 政策学部・総合政策科学研究科 ソーシャルイノベーションコース 教授
博士(事業構想学)/地域力創造アドバイザー(総務省)
東急百貨店、東急総合研究所、ボディショップ等企業で20数年に渡りソーシャルマーケティングを実践。2002年ロハスを日本に紹介。2014年4年~20年3月まで「世界農業遺産等専門家会議」委員(農水省)。有機農業や生物多様性などSDGsをテーマに各地の農山村での地域づくりを支援。
主な著書:『アグリ・コミュニティビジネス』(学芸出版社)、『SDGsとまちづくり』(共著、学文社)

【レポート執筆】
⼩堀菜花/第1期若者アンバサダー
東邦大学薬学部在学中。環境問題に興味を持ち始めたのは、小学校のとき先生に怒られたから。自称「なのアクティビスト」で、どんな小さいことでも、できることから始めています。
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