若者アンバサダープログラムの学びシリーズ第10回目のレポートです。
「学びシリーズ」は、DO!NUTS TOKYO公式アンバサダーの皆さんに向けて行われるレクチャーであり、若者アンバサダーとして活動を行っていただく上で参考になると思われる知識の習得や、ご自身の考えをより深めていただくことを目的としています。
第10回目は、2021年10月1日(金)に、DO!NUTS TOKYOのアドバイザーであり、一般社団法人MSCジャパン プログラム・ディレクターの石井幸造氏、シニアコマーシャルオフィサーの仲山真由氏の2名を講師にお迎えし、「水産資源の現状とMSC認証制度について」をテーマに開催しました。
レクチャー後は振り返りとして、グループディスカッションを行い、活発な意見交換が行われました。

■レクチャーレポート
1.ポイント
- 水産物は世界中で消費される動物性タンパク質で、その消費量は1990年~2018年の間で122%増えており今後も増加が見込まれる。
- 近年、海洋汚染や気候変動といった要因に加え、過剰漁獲によって水産資源は減少傾向にあり、生物多様性の危機や食料安全保障への影響等が懸念される。
- MSC認証によって、「水産資源・生態系の持続可能性」、「IUU(違法、無規制、無報告)漁業の排除」、「強制労働・児童労働の抑制」が期待される。
- MSC認証には、持続可能な漁業に対する「MSC漁業認証」と、水揚げ以降のサプライチェーンにおいて非認証の水産物の混入を防ぐことを目的とした「MSC CoC認証」の2つがある。
- MSC認証取得済み漁業は全世界で446件(2021年3月31日時点)、日本国内で12件存在する。
- MSC CoC認証取得企業は世界で5,516件、302件あり増加傾向にある。(2021年10月1日時点)
- MSCエコラベル付き商品は国内において増えており、イオン、日本生協連、セブン&アイホールディングス等が多様な商品にて積極的に採用している。
- MSC認証はフードサービスや社員食堂、機内食など導入例は広がっており、SDGsやESG投資の機運と共にマーケット拡大の傾向にある。
- 日本国内のMSC「海のエコラベル」認知度は19%で、世界平均の46%に比べて低い。今後はより多くの人に知ってもらうことが課題となっている。
2.サマリー
「水産物」は世界中で何十億もの人々に消費されている動物性タンパク質の一つで、1990年~2018年の間で、水産物消費量は122%増加しています。しかし、近年は海洋汚染、気候変動といった要因に加え、過剰漁獲によって水産資源は減少傾向にあり、生物多様性の危機や食料安全保障と経済への影響等が懸念されています。
世界の水産物の漁獲・生産量について、年々天然の水産物の漁獲量、生産量が減っており、養殖が増えている状況にあります。そして、世界の漁獲の3割以上が過剰漁獲といわれており、その割合は年々増加しています。また、水産資源の減少や海洋生物の減少だけでなく、IUU漁業(違法、無報告、無規制に行われている漁業)や強制労働、児童労働も問題となっています。
MSC(Marine Stewardship Council:海洋管理協議会)は1997年に設立され、イギリスに本部があります。MSC認証は「持続可能な漁業で獲られた水産物」を示す認証制度であり、認証漁業で獲られた水産物にはMSC「海のエコラベル」が表示されます。MSC認証によって、「水産資源・生態系の持続可能性」、「IUU(違法、無規制、無報告)漁業の排除」、「強制労働・児童労働の抑制」が期待されます。
MSC認証には、持続可能な漁業(天然)に関する認証である「MSC漁業認証」と、水揚げ以降のサプライチェーンにおいて非認証の水産物の混入を防ぐことを目的とした「MSC CoC認証 (Chain of Custody認証=流通、加工の管理認証)」の2つがあります。
「MSC漁業認証」の3つの原則
- 資源の持続可能性-過剰な漁獲を行わず資源を枯渇させないこと。枯渇した資源については回復を論証できる方法で漁業を行うこと。
- 漁業が生態系に与える影響-漁業が依存する生態系の構造、多様性、生産力等を維持できる形で漁業を行うこと。
- 漁業の管理システム―原則1、2を満たすための地域や国内、国際的なルールを尊重した管理システムを有すること。また、持続可能な資源利用を行うための制度や体制を有すること。
「MSC CoC認証」5つの原則
- 認証製品は認証取得サプライヤーから購入されなければならない
- 認証製品であることが識別できなければならない
- 認証製品は分別されなければならない
- 認証製品は追跡が可能で、数量が記録されなければならない
- 事業者の管理システムは、本規格の要求事項に対応するものでなければならない
どちらの認証も第三者の審査機関が厳格な規格に基づいて審査します。
現在、MSC漁業認証取得済み漁業は世界で446件、日本国内で12件存在し、徐々に広がりを見せています。そして、CoC認証も取得企業数は増えており、世界で5,516件、日本国内で302件となっております。
国内では、小売企業だけでなく社員食堂や飛行機の機内食、ECサイトなど様々な企業が積極的にMSCエコラベルを採用しており、広がりをみせています。
一方で、世界と比べるとMSC「海のエコラベル」の認知度が低く課題となっているため、更なるマーケットの拡大のためにはより多くの人にMSCのエコラベルを認知してもらうことが重要である。
3.感想
私は魚が好きで、釣りをしたり自宅で海水魚を飼育したりしており、テーマとしては非常に興味深い内容でした。そんな私ですら、今回の講義を受けてMSC認証「海のエコラベル」の存在を初めて知ったので、一般の認知度はまだまだ低いことに納得感がありました。
「水産資源の枯渇」や「生態系の破壊」といった問題は、温暖化に比べて軽視されがちな問題かと思いますが、水産大国である日本にとって非常に重要な問題だと思います。今後はMSC「海のエコラベル」をより広めていくために、国の助成金の検討や法律の整備といった行政の動きかけも必要なのではないかと思いました。
4.同世代に伝えたい点
- まずは身の回りにある、MSC「海のエコラベル」を探して、手にとってみよう
- 日本の食文化を守るためにも、MSC「海のエコラベル」がついた商品を積極的に買おう
- MSC認証は輸出時の条件になるなど、ビジネスの観点でも重要
- MSC「海のエコラベル」を知らない友達がいたら教えてあげよう

【講師】
石井幸造 一般社団法人MSCジャパン プログラム・ディレクター
仲山真由 一般社団法人MSCジャパン シニアコマーシャルオフィサー

【レポート執筆】
仲村元樹/第1期若者アンバサダー
株式会社ゼロック 執行役員
早稲⽥⼤学商学部卒業。大学時代にインドや南米を訪れ、環境問題に関心を持つ。新卒で環境系プラント事業会社へ⼊社。廃棄物焼却施設建設事業の営業・財務モデリングに従事。その後、株式会社マクロミルへ⼊社。法人向け市場調査、マーケティング支援業務に従事。現在は環境系ベンチャー企業にて執行役員を務める。
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