若者アンバサダープログラムの学びシリーズ第17回目のレポートです。
「学びシリーズ」は、DO!NUTS TOKYO公式アンバサダーの皆さんに向けて行われるレクチャーであり、若者アンバサダーとして活動を行っていただく上で参考になると思われる知識の習得や、ご自身の考えをより深めていただくことを目的としています。
第17回目は、2022年9月2日(金)に、特定非営利活動法人Gender Action Platform 理事の大崎麻子氏を講師にお迎えし、「ジェンダーと気候変動-SDGsから考える-」をテーマに開催しました。
レクチャー後は振り返りとして、グループディスカッションを行い、活発な意見交換が行われました。
■レクチャーレポート
1.ポイント
- 「ジェンダー平等」は国連加盟国193カ国が合意した国際社会共通の目標である。
- 「ジェンダー平等」と「気候変動」は関わり合っている。
- 「無償ケア労働」(家事、育児、介護など家庭内で無償で行われている労働)は人々の生存・生活、そして社会・経済活動を支える重要なものである。
- 日本でも身近な問題である。
- 「夫が稼ぎ、妻が家事育児」「男性が責任ある仕事、女性が補助業務」といった性別役割分業ではなく、性別に関係なくあらゆる機会・責任を分かち合えるような解決策が重要である。
2.サマリー
「ジェンダー平等」とは、すべての人が、性別にかかわらず権利と機会を享受し、責任を分かち合える状態を指します。また、性別を理由に直接的・間接的な差別を受けないようにすることです。私たちは、家庭、学校、職場、メディアで見聞きしたり、経験したことから様々な影響を受けますが、「男らしさ」「女らしさ」の固定概念や性別役割分業意識もその過程で内面化されます。また、そうした性別役割分業意識が組織や社会・経済に構造化されています。「ジェンダー平等」が目指しているのは、こうした構造や社会規範を変革し、すべての人が性別にかかわらずに尊重され、あらゆる選択ができる状態を作ることです。SDGsでは、ゴール5として「ジェンダー平等」が掲げられていますが、それだけではなく、17のすべてのゴールにジェンダー視点を主流化しなければならないと強調しています。
ジェンダー視点の主流化とはなんでしょうか。「教育」を例に見てみましょう。
SDGsのゴール4、教育「すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」
女子の初等教育の就学率は高くなっている一方、高学年や中学校と学年が進むにつれて女子就学率が下がり、男女格差が開きます。なぜ、そのような格差が生じるのか、女子もしくは男子特有の障壁にはどのようなものがあるのかを見極めるのが「ジェンダーの視点」です。例えば、女子の就学率が低い背景として考えられる「女子特有の障壁」としては、
・生理。生理用品が無い、学校に男女別トイレが無い、給水設備がない。
・児童婚(早すぎる結婚、望まない結婚)
・性暴力や避妊に関する知識・避妊ツールへのアクセスが無いことによる望まない妊娠、出産
・「女子に知識はいらない」という文化的慣習
・水汲みや薪集めなどの無償ケア労働の手伝い
が挙げられます。こうした障壁を取り除くことで、男女が平等に教育を受ける機会を享受できるようになります。
「無償ケア労働」をご存知ですか?ケア労働は、家事、育児、介護、看護など、人のケアにまつわる労働を指します。それが家庭内や地域社会で無報酬で行われている場合、「無償ケア労働」となります。これまで、それは「女性の役割」とされてきました。無報酬なので社会的・経済的価値が無いように見えますが、実はこうしたケア労働が、日々の経済活動・生産活動を下支えしています。また、育児は次世代の労働力を育むことでもありますから、人的資本の蓄積に直接的に寄与しています。価値の高い労働であり、時間も労力もかかる労働ですが、経済的な報酬はありません。重要な労働を担いながら、経済力を持たない女性と、報酬のある労働を担う男性との間には力関係が生まれます。また、途上国では、水汲みや薪集めなど時間も体力も使う労働もあり、それが女子教育、女性の経済・社会・政治参加の大きな障壁となっています。
気候変動も男女に異なる影響を及ぼすので、ジェンダー視点から問題を見ることで、男女の異なる状況やニーズを洗い出し、施策を考えなければなりません。
例えば、途上国での気候変動の影響に、森林資源の減少があります。森林資源の使い方や森林での活動の仕方は男女で異なります。例えば、男性は建設用資材となる木材を伐採し、販売するなど、経済活動が主です。一方、女性は薪や水を集めたり、野菜やきのこやハーブなどを栽培するなど、家族の生存のための活動が中心的です。森林資源が減少する、または森林保全のために立ち入りができなくなると、収入源を失った男性は都市部や海外に出稼ぎに出ます。一方、女性は地域に残りますが、より遠くの水源や自然資源を求めて労働量・労働時間を増やしながら生活を維持します。こうした影響・行動の違いを踏まえた上で、「誰一人取り残さない」支援や施策のあり方を考えることが大切です。
気候変動により、「自然災害」が増えています。日本でも、大規模な風水害が各地で起こっています。行政機関で防災・危機管理を担当しているのは男性が多いのですが、被災する地域住民は、男女はもちろん、高齢者、こども、妊産婦、障がいのある人、外国人など多様です。例えば、避難所でのニーズは男女で異なります。身体的な違いに起因するニーズだと生理用品はもちろんのこと、安全なトイレや下着を干せる場所など、衛生を保てる環境が尿路感染症になりやすい女性の場合は健康や公衆衛生を保つために重要です。性被害を受けやすいのでプライバシーを保つ間仕切りやトイレ周辺の照明も重要です。男性も避難所運営で大変なストレスを抱えますが、心のケアがなされないことで後々の心身の健康に影響が出るとも言われています。そこで、防災・危機管理でも、意思決定や政策決定を男女が一緒に行うことで、ジェンダー視点のある備えをすることが重要です。それが東日本大震災を含む世界各地の大規模自然災害の教訓です。 ジェンダー平等に向けて動き出すためには、女性の周りにある環境に目を向け、男性と女性が一緒に考えを深め合う環境が大切です。気候変動を解決すると共に、ジェンダーの視点から問題を捉え直していくことが求められます。
3.感想
ジェンダー平等が達成されるべき目標であるのは、世界において訴えられていることだと思います。しかし、女性を巻き込んだ話し合いを進め、解決策を決めていく必要があるのを忘れてはいけません。特に途上国では、ジェンダー平等の問題は教育現場に大きな影響をもたらします。気候変動により深刻さを増すジェンダー平等は、一刻も早く解決されるべきです。まずは、自身の持つ固定概念を見直し、今ある当たり前から変容していきたいです。ジェンダー平等に限ったことではありません。幅広い視野を広めて社会変容へ繋げていきたいと考えています。
4.同世代に伝えたい点
- インクルーシブな環境づくりを始める。
- 性別ではなく、個人の得意なことを活かすことのできる環境を築く。
- 障害のある人、LGBTQ+の人、母子家庭や父子家庭の人、学校に通っていない人など、男性や女性という性別に関わらず、様々な視野を持って話し合う。
- 変容を地域レベルで目指す。
- データや調査を通した根拠に基づく分析で、ニーズの抜け落ちをなくす。
【講師】
大崎麻子 特定非営利活動法人Gender Action Platform理事

【レポート執筆】
Sara/第2期若者アンバサダー
教育からのアプローチを通して社会変容へ繋げ、未来の⼦どもたちにとって地球が安⼼できる場所を⽬指す聖心女子大学生。
【関連記事】学びシリーズ第1回「持続可能社会ってどんな社会?」
【関連記事】学びシリーズ第2回「ゼロエミッション東京戦略」
【関連記事】学びシリーズ第3回「気候変動と土地利用」
【関連記事】学びシリーズ第4回「有機農業が育む生物多様性と地域資源活用」
【関連記事】学びシリーズ第5回「生活者を巻き込む森づくり」
【関連記事】学びシリーズ第6回「家では何ができるか?そのリアリティ」
【関連記事】学びシリーズ第7回「あなたの1円が社会や未来を変える!?」
【関連記事】学びシリーズ第8回「SDGsを活かした地域づくり」
【関連記事】学びシリーズ第9回「みんな参加型の循環型社会」
【関連記事】学びシリーズ第10回「水産資源の現状とMSC認証制度について」
【関連記事】学びシリーズ第11回「地域でSDGs・ゼロカーボンを実践し、世界につながる」