• KNOWLEDGE
  • ムーブメントと社会変革
  • ビジネスモデル
  • 気候変動
  • 生物多様性
2022年11月30日 15:37

Present Treeイベントレポート

宮城県大崎市での植樹体験や大崎市長へのインタビューを通して感じたことをレポートにまとめました。
  • コピー

「贈り物に樹を植えよう!」をコンセプトに自分や大切な人のために樹を植えて、地元と共にその後10年間育てていくというプロジェクト活動を続けるPresent tree様の主催する植樹イベントに若者アンバサダー3名が参加しました。

今回植樹が実施されたのは紅葉真っ盛りの宮城県大崎市。植樹体験だけではなく、SDGs未来都市に選定された大崎市が目指す姿について市長にもインタビューしてきました。

■イベント参加レポート

1.ポイント
  • 次世代へ大崎の自然や環境を、つなげる努力をインタビューした。
  • プレゼントツリーが24,000本強も植えられている大崎市で植樹体験をした。
  • 掘りたての大根を食べたり、ブランド米ゆきむすびのおにぎりや地元のお母さんたちの炊き出しを味わった。
  • ラムサール条約登録湿地で、鳥好きママさんガイドに連れられて圧巻の雁行を観察した。
2.サマリー

Q. 市長が語る大崎市の魅力とは何ですか?
 先人が残してくれた宝が、日本全国に誇れるような宝がいっぱいあることが大崎の魅力だと思います。
 この地域は、夏の季節風『やませ』による冷害や、山間部の地形が原因でおこる渇水、低平地でおこる洪水などが昔から問題となっていました。そんな自然の脅威に負けないよう、人々は知恵を、この地域で培っていきました。そんな知恵や工夫が現代まで受け継がれた結果、世界農業遺産(GIAHS)に認定されました。大崎耕土は農文化、食文化、景観、そして生物との共生関係、全ての「つながり」が評価されています。地域全体での持続可能性が認められたことは、世界でも珍しく誇りに思っています。
 また、渡り鳥が本能的に好む自然環境を維持できているところも魅力の一つです。大崎市には化女沼や蕪栗沼というラムサール条約湿地があります。最近は気候変動が各地で感じられますが、伝統的な水管理のシステムによって毎年10~15万羽のマガンが、大崎に通い続けてくれています。農薬を一切使用しない農業や、手作業による米の収穫などの地道な農家の努力が、渡り鳥の餌場を守り、多くの生物が集まる場所になっていると実感しています。
 現在は、巧みな水管理システムから生まれる大崎の農・食・生物の大切さを、次世代につなげようと頑張っています。カーボンニュートラルをはじめとした持続可能性が求められる時代なので、大崎の魅力を「SDGs未来都市」というかたちで認定してもらいました。「市民協働」と「自然共生」を基盤としたSDGsのゴールやターゲットを設定をして取り組みを進めていています。このように世界が目指そうとする自然や環境がそろっていることが、大崎市の一番の魅力です。

大崎市の凛々しい山々と美しい紅葉

Q.取り組みの中で一番難しいと思うことは何ですか?
 一番は、大崎市民の理解と協力です。変わりゆく時代の中で、昔ながらの環境や技術を維持していくためには我慢が必要です。しかし、世界から認めてもらった地域は、今生きている私たちから次世代に引き継ぐ責任がある地域でもあります。
 次世代につなぐために、副読本を作って子供たちの学校教育に取り入れる活動や、体験学習、おおさき生きものクラブなどの取組を推進しています。子供たちが実際に生物多様性に触れられる機会を増やすことで、その親やまたその上のおじいちゃんおばあちゃんの世代にも伝わります。このような機会は、市民が改めて大崎の魅力に気づくことができます。さらに、プレゼントツリーをはじめとした企業との協力も必要不可欠です。渡り鳥や市外の企業さんのほか世界から認定されることで、ふるさとの魅力を再認識し住んでいる自分たちも努力を続けられます。

Q.市長の原動力はどこからくるのでしょうか?
 肉体的な元気の源は、相撲から学びました。アマチュア相撲で3段の実力があり、そのつながりで横綱に大崎市を訪れていただいたことがあります。
 政治の道へ進んだのは、自分を育ててくれた地域に恩返しをするためです。もともと、東北地方は「奥の細道」と呼ばれるほど、不便で外から魅力が伝わりくい場所でした。昔は水害も多く三年に一度しか収穫が見込めない年もあったほど、非常に貧しく不便な地域だったと思います。しかし、減反政策、東北新幹線の開通、高速道路の建設などと時代は変わってきました。そんな時代が変わっていく中、自分のふるさとを外から見る機会がありました。そのとき、ふるさとは誰かからの借り物ではなく、自分たちのものだから、自分たちが責任をもって作り上げていこうと決心しました。相撲から政治に挑んだ自分においしい農産物でエネルギーをくれたふるさとに、この地域を豊かにして恩返ししたいと思いました。

しかし、少子高齢化、人口減少などで若い人が減ってしまうとふるさとを維持することが困難になります。人の手が薄れると、景観が荒れてしまい自然が循環できなくなってしまいます。災害の原因にもなりかねません。
 そんな問題が全国で顕在化している今、私が若い人に伝えたいことは、自分のもう1つのふるさとのをどこかに作ってほしいことです。いわば「関係人口」になってほしいです。都会の便利さと、都会にはない豊かな自然をもつふるさとの二拠点で活躍してくれる人が増えてくれるといいと思っています。環境や地域の生活を維持できるように応援をしてくれる人が増えれば、地域のさらなる活性化につながると日々感じています。

大崎市長とDO!NUTS アンバサダーとの記念写真

3.植樹体験(プレゼントツリー)

大崎市ではプレゼントツリーと連携し今までに24000本の植樹が行われてきました。植樹は、今回のイベントのように日本全国から来た一人一人の手によって植えられています。もともと馬の放牧地として使われているところに木を植えることで、サステナブルな大崎市を作ることに繋がっています。
 私たちもコナラ一本ずつ植樹を経験しました。まず、”くわ”で土を掘る。くわに慣れていない上に深く掘らないといけないため大変でした。実は、ほとんど地元の方に掘ってもらいました。その後、植える木の苗を掘ったところに入れて土をかけます。最後に足で軽く根元を固めます。まっすぐ植えることが想像以上に難しかったです。驚いたのが、土を掘った時におそらく冬眠していたカエルが出てきてしまったことです。アンバサダーの佐々原さんは植えた木に名前をつけていました。いつか木が大きく育った時、「自分が植えたんだ」と感慨深くなる気がします。

地元の人に手伝ってもらいながら植樹体験をする若者アンバサダー

4.鬼首高原大根収穫体験、ブランド米ゆきむすびのおにぎり・鬼首高原大根・汁物、閉会式

植樹をした後、紅葉とススキの道を抜けて近くの高橋農園様に移動しました。今回収穫体験をしたのは禿岳の麓で有機肥料によって丁寧につくられている鬼首高原大根です。食べてみると、みずみずしくシャリっとした食感はまるで梨のようで、冷涼な気候により凝縮された甘味が口いっぱいに広がります。一緒に参加していた小学生も美味しそうに生の大根を頬張っていました。力強く根付いた大根は引っこ抜くのに一苦労…。しかし、収穫した後に見る立派な白い大根には感動しました。綺麗な空気を吸いながら紅葉とススキを横目に開放感あふれる収穫体験になりました。
 お昼を過ぎ、美味しそうな匂いにつられてたどり着いたのは近くの集会場。地元のおかあさんたちが朝から真心こめて作って下さった昼食には、地元の人も普段食べる機会が少ないというブランド米のゆきむすびのおにぎりがありました。もち米と米の間の粘り気があるモチっとした甘いおにぎりでした。また鬼首高原大根の餡掛け、いろいろな種類のキノコが入った朝採れキノコ汁、手づくり梅干しともろみを美味しくいただきました。地元の方と方言や大崎の魅力について盛り上がりながら楽しい時間を過ごすことが出来ました。

地元のお母さんたちが、地元の食材で作ってくださった炊き出し。
鬼首高原での大根収穫体験

5.雁行@蕪栗沼

大崎市の蕪栗沼に「マガンのねぐら入り」を見に行きました。ガイドの方に説明していただきながら観察しました。ガイドの方は、私からしたら同じように見える鳥たちの種類を、一目で見分けることができるほど鳥への愛が大変大きい方でした。ガン、白鳥、カモなど大崎市に生息している鳥たちは1日が終わると蕪栗沼などに戻っていきます。特にマガンは夕方に一斉に戻ってくるため「雁行」を見ることができる。「雁行」は三角形を作りながら集団で空を飛んでいます。ほとんどが家族で先頭に子ども、後ろに親が列を作ります。多い時は空一面にガンが飛んでいて圧巻の景色で思わず声が出てしまうほどでした。沼についても鳥たちは鳴き続けて自分の居場所を知らせます。冬場は沼が凍ってしまうこともあり、動けなくなったガンが他の動物に食べられてしまうこともあるらしいです。東京では、鳥は電線に留まっていたり道に落ちているゴミをつついていたりします。大崎市のマガンのねぐら入りはまさに「自然」を感じることができました。

皆で寒い夕方観察した「マガン」のねぐら入り

6.感想

佐々原さん:日頃からSDGsを活かした地域づくりや農業振興に関心のあるため、GIAHS(世界農業遺産認定地域)、SDGs未来都市、ラムサール条約登録湿地という三つの胸を張ってPRできるポイントがある非常に魅力的な街でした。また、地元の行政職員や林業従事者、炊き出しを振舞って下さった地域の方々との対話を通じて、大崎市民の外から来た初対面の人を寛容な心で受け入れるあたたかさにも触れることが出来ました。まずは自然を感じ、美味しいお米を食べ、名湯に入って大崎を堪能して交流人口になり植樹(プレゼントツリー)を通して大崎にルーツを持つことで長期的に多様な関わりをする「関係人口」になっていく人が増えれば良いと考えます。また、植樹(プレゼントツリー)を行う上流とGIAHSに認定されている下流の繋がりを認知させ、SDGs未来都市との包括的なアイデアを考えていきたいです。

阪田さん:私にとって植樹、大根の収穫、マガンのねぐら入りなど多くが初めての経験となりました。大崎市は人間と鳥が同じぐらい生息(生活)しているほど鳥が多く住んでおり、自然に囲まれています。市長へのインタビューを通し、いかに大崎市の「関係人口」を増やすかが重要だと思いました。気候変動だけでなく、日本は少子高齢化という問題を抱えており大崎市でも深刻になっていると感じました。そこで、東京のような人やモノが多い地域から年に数回など若い世代がより参加しやすく行きやすいものがあればいいのになと思いました。たとえば、夏休みや春休みなど長期休暇の時期に一週間ほど大崎市で暮らすプログラムは魅力的です。一週間の中で農業や林業を手伝い、大崎市の食材で料理して過ごしたいです。友達同士でよく「自然の中に行きたい」という話をしています。


小堀さん:一番の魅力は大崎市長自身だと、実際に大崎市に訪問したときに強く感じました。市民や外部の人にどうやってふるさとの魅力を再認識してもらうか、さらにふるさとの魅力をどのように次世代につなげるのか、熟考し行動されていることに感動しました。また、予定されていた2倍のインタビュー時間を私たち若い人にかけてくださったり、バスから降車するひとに一人ずつ丁寧にあいさつをしてくださったりする市長の姿勢が印象的でした。こんな魅力的な市長は全国でも珍しいので、市長に会いに大崎市に行きたいです。そのときは今回聞きそびれてしまった、ゼロエミッションに関するワークショップなどができたらと考えます。

7.同世代に伝えたい点
  • 大崎の関係人口になろう!
  • 第二の故郷として大崎市を訪れてみよう!
  • 自然!温泉!食べ物!を堪能しに行こう!
  • 大崎からゼロエミッションを進めるアイデアを考えてみよう!

【レポート執筆】
阪田留菜さん/第1期若者アンバサダー
慶應義塾大学総合政策学部在学中。気候変動対策を求める社会運動Fridays For Futureのオーガナイザーとして活動中

【レポート執筆】
小堀菜花さん/第1期若者アンバサダー
東邦大学薬学部在学中。環境問題に興味を持ち始めたのは、小学校のとき先生に怒られたから。自称「なのアクティビスト」で、どんな小さいことでも、できることから始めています。

【レポート執筆】
佐々原悠馬さん/第2期若者アンバサダー
同志社大学政策学部在学中。自身の存在によって、市⺠と企業、⾏政をつなぎ市⺠の環境に対する意識変容を起こそうとアクティブに活動する同志社大学生。


今回の植樹体験イベントの様子はPresent Treeさんのウェブサイトでもご確認頂けます。


【関連記事】学びシリーズ第1回「持続可能社会ってどんな社会?」

【関連記事】学びシリーズ第2回「ゼロエミッション東京戦略」

【関連記事】学びシリーズ第3回「気候変動と土地利用」

【関連記事】学びシリーズ第4回「有機農業が育む生物多様性と地域資源活用」

【関連記事】学びシリーズ第5回「生活者を巻き込む森づくり」

【関連記事】学びシリーズ第6回「家では何ができるか?そのリアリティ」

【関連記事】学びシリーズ第7回「あなたの1円が社会や未来を変える!?」

【関連記事】学びシリーズ第8回「SDGsを活かした地域づくり」

【関連記事】学びシリーズ第9回「みんな参加型の循環型社会」

【関連記事】学びシリーズ第10回「水産資源の現状とMSC認証制度について」

【関連記事】学びシリーズ第11回「地域でSDGs・ゼロカーボンを実践し、世界につながる」

【関連記事】学びシリーズ第12回「葛西臨海公園 生態系観察会」      

【関連記事】学びシリーズ第14回「郵便局とともに作るサステナブルな未来」