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2023年4月7日 18:00

学びシリーズ第18回「ソーラーシェアリングを活用した地域活性」

2022年9月9日(金)に「ソーラーシェアリングを活用した地域活性」をテーマにオンラインレクチャーを開催しました。
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若者アンバサダープログラムの学びシリーズ第18回目のレポートです。

「学びシリーズ」は、DO!NUTS TOKYO公式アンバサダーの皆さんに向けて行われるレクチャーであり、若者アンバサダーとして活動を行っていただく上で参考になると思われる知識の習得や、ご自身の考えをより深めていただくことを目的としています。

第17回目は、2022年9月9日(金)に、株式会社さがみこファーム 代表取締役社長 山川勇一郎氏とマネージャーの小出竜士氏を講師にお迎えし、「ソーラーシェアリングを活用した地域活性」をテーマに開催しました。
レクチャー後は振り返りとして、グループディスカッションを行い、活発な意見交換が行われました。

■レクチャーレポート
1.ポイント
  • エネルギーも、農作物も作れて、環境や地域への意識も高まる装置がある!?
  • 農業の領域に発電装置を導入するにあたり、地域の方との信頼構築は重要
  • 新たな生活様式に対応するためフォーキャスト方式からバックキャスト方式への発想の転換が必要
  • 地域発電力に取り組む人のアツい想いと、普及させる上での困難とは?


2.サマリー

日本全体として、農業人口の減少、地域の過疎化、耕作放棄地の増加、再生可能エネルギー拡充の必要性などの問題が切迫する中で、農業とエネルギーと地域課題を同時に解決しうる、「ソーラーシェアリング」というシステムを、さがみこファームさんがどのように活用しているのか、その目標や意義、取り組む中での課題についてレクチャーを受けました。

さがみこファームが運営するさがみこベリーガーデンは、相模原の緑区青野原前戸地区という、地元農家が一軒まで減少してしまった地域で耕作放棄地を開墾し、「ソーラーシェアリング型・会員制ブルーベリー農園」として営農されています。

⇒ソーラーシェアリングって?
そもそもこれは、農地の上に太陽光パネルを設置し、農業と太陽光発電の両方を行う仕組みです。2013年に農林水産省が「支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備等についての農地転用許可制度上の取扱いについて」という通達を出して以降、全国に徐々に広がっています。

さがみこファームでは、太陽光パネルの下に収益性が高く日影耐性も強いブルーベリーを、33種類も栽培し、2022年夏時点で272kw(一般家庭72軒分の電気)を発電しています。今後も増設予定だそうです。さがみこファームの特徴は、

  • 脱職人化した農業 (ポット養液栽培を駆使し、農業に専門性の無い人でも参加しやすく)
  • 持続的運営とファン獲得のための、会員制
  • たのしく学べる機会の創出(食育、エネルギーや自然体験などのプログラムも実施)
  • 農業×エネルギー を通じた地域活性化に取り組む(災害時に農園の太陽光電力を自治体に供給する協定や、EVを使った地域周遊プランの計画などなど)

これらを通じて、人口が減少し荒廃した土地を再生して、クリーンなエネルギ―を生み出すと同時に、収益性や観光客増加などによって、地域や農業と共生していく新たな一次産業のあり方を発信しよう!という、さがみこファームさんの熱い気持ちが伝わってきました。

レクチャーを受けた若者アンバサダーの中には、地方での環境教育などの取り組みに関わる人や、ソーラーシェアリングの全国的普及がなかなか進まない課題を認識している人もいたので、以下のような疑問点が出ました。

  • 地域にソーラーシェアリングを導入する際、地域住民の反応はどうだったのか
  • こうした取り組みを他の地域にも展開していきたいが、さがみこベリーガーデンの地域だからこそのメリットやデメリットはあったのか
  • ソーラーシェアリングをより日本で増やしていくにあたって障壁になっている、初期投資の高さ、や経済的なリスクについてどう思うか

これらの疑問に対して、さがみこファームさんからは、

⇒相模原という地域が太陽光発電のネガディブイメージをもともと持っていない地域だった
ことで、導入への抵抗感はそこまでなかった。

⇒地域への入り方も大事だが、さらに重要なのはその後の行動。元からいた農家さんたちと草刈りで協力したり、農業への真摯な姿勢を地域共同体のなかでしっかりと示していくことで信頼関係が築けていく。

⇒ソーラーシェアリングの初期投資の高さは確かに参入の障壁の要因にはなるが、投資という観点だとマンション経営などと経済的コストはそこまで相違しない。より大きく違うのは、本当に作物がパネルの下で育つのかという点の科学的根拠や学術的検証が不足している点などだろう。
といった回答をいただき、実際現場で取り組んできた方々の知見と経験から得られる示唆を学びました。

3.感想

個人的に、他の地域のソーラーシェアリングを視察しにいったこともありましたが、比較的成功している事例は、どれもさがみこファームさんのように、「地域住民の人との信頼関係の構築、農業への誠実さ」を共通する要素として含んでいるように思えます。これらは一朝一夕で成し遂げられるものではなく、先駆者とよべる、クリーンなエネルギーや農業に対する熱い意欲を持った人たちが、長い時間をかけ試行錯誤した結果だと感じました。

同時に、ソーラーシェアリングを活かした地域活性や再エネ拡充を日本で水平展開していくためには、行政や企業の協力をもっともっと得る必要があり、課題も山積みだと感じました。ソーラーパネル下での農作物の成長の実験などはオランダやドイツ、フランスなどで現在進行形で実施されているようですが、日本では進んでいないようです。さらに、先駆者たちが試行錯誤して得た成果をより広げていくためには、システムの構築や、行政による指導などがもっと増えるべきだと思います。営農型太陽光発電の許可を得るにあたっても、農業とエネルギーを管轄する省庁が分かれているなか、制度的に難しい点が多々あります。




4.同世代に伝えたい点

私はもとから再生可能エネルギーに興味があり、その拡充の手段の一つとしてソーラーシェアリングを魅力的だと感じています。ただ、このレクチャーを受けて、私のように自然エネルギーを増やしたい!という気持ちだけでは、地域との合意形成や農業との両立が不可欠になるこのシステムはうまくいかないことを実感しました。

そして、課題は山積みでも、さがみこファームさんのように、若者にも負けない熱量で農業×エネルギーに取り組み、観光や地域課題ともかけ合わせてチャレンジを続けている大人が、都心の外にもたくさんいることも、ぜひもっともっと多くの人に知ってもらいたいです。私個人としては、現在大学で、環境問題について工学的手法を用いたり、社会経済的要因を含め課題解決を図ろうとしています。学術的な面で、今回気づいた課題に対して少しでも貢献できるよう、仲間を増やし、自身も努力しようと思います。



【講師】
小出 竜士
株式会社さがみこファーム
マネージャー

北海道出身 北海道大学大学院 文学研究科卒業
2009年から丸善株式会社に入社
2022年株式会社さがみこファームに入社

【レポート執筆】
周 文佳/第2期若者アンバサダー

理論や学術的探究と実践の両方から気候変動問題に取り組む 東京大学一年生。


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