若者アンバサダープログラムの学びシリーズ第20回目のレポートです。
「学びシリーズ」は、DO!NUTS TOKYO公式アンバサダーの皆さんに向けて行われるレクチャーであり、若者アンバサダーとして活動を行っていただく上で参考になると思われる知識の習得や、ご自身の考えをより深めていただくことを目的としています。
第20回目は、2023年2月10日(金)に、農林水産省大臣官房環境バイオマス政策課長の清水浩太郎氏を講師にお迎えし、「みどりの食料システム戦略の実現に向けて」をテーマに開催しました。
レクチャー後は振り返りとして、グループディスカッションを行い、活発な意見交換が行われました。
■レクチャーレポート
1.ポイント
・気候変動や世界情勢の変化は農業分野にも大きな影響
・みどりの食料システム戦略は、日本の食料安全保障と環境保全の観点で重要な戦略
・みどりの食料システム戦略では、農林水産業のCO2ゼロエミッション化、化学農薬や化学肥料の使用量の削減、有機農業の拡大、持続可能性に配慮した輸入原材料調達の実現等を目指す
・環境負荷低減に取り組む生産者と新技術の提供等を行う事業者を支援
2.サマリー
地球温暖化による気候変動や大規模自然災害の増加が起きています。日本でも確実に気温は上がっていて、水稲の高温による品質低下やりんごの着色不良、農作物の産地の北上が起きています。農業は元々、多面的機能を有しており自然と調和して行われてきたものでしたが、緑の革命以降、化学農薬や化学肥料の使用、機械化や農地拡大が進み、環境破壊や温室効果ガス排出の大きな要因となりました。
さらに、昨今の世界情勢の変化で、化学肥料の価格が高騰、量の確保が困難になるなど、海外からの輸入に依存する状況から、持続可能な食料システムの構築に向け、みどりの食料システム戦略が策定されました。
戦略の中では2050年に向けて、農林水産業のCO2ゼロエミッション化、化学農薬50%削減、化学肥料30%削減、有機農業25%に拡大といった目標を掲げています。2030年の中間目標も設定し、不足部分は技術革新で埋めていく形となります。調達、生産、加工、消費の各段階でカーボンニュートラル等の環境負荷軽減のイノベーションを推進していきます。
戦略を実現するにあたり、みどりの食糧システム法の制定を行い、環境負荷低減に取り組む生産者と新技術の提供等を行う事業者を支援します。生産者の支援では、各自治体で基本計画を策定し、各農業者の計画を認定し、補助金や税制優遇等の支援を行います。事業者は各社で計画を策定し認定されたところから支援を受けられます。
より持続性の高い農法への移行を行うため、栽培暦の見直しや栽培マニュアルの見直しを行なったり、農薬に頼らない総合防除の研究を行なっています。病気になりにくい品種の育成も農研機構で検討されています。環境負荷低減の見える化として、作物にCO2削減効果に合わせた等級ラベルの表示を行うなどの実証も行われています。
3.感想
水と食糧と資源エネルギー、この3点は人類が生きていく中で必要なもので、これらが争いのきっかけになることも多くあります。兵糧攻め(食糧を断つ)というのは昔から有効な戦略で、逆にいうと食糧を確保することは国防と同義になります。しかし、日本の食糧自給率は4割弱、さらに農業の多くを海外製の化学農薬や化学肥料に頼っており、危険な状況です。そんな中で、みどりの食糧システム戦略で明確な目標が打ち出されたことは希望だと感じました。目標の実現は簡単ではなく、課題も多い状況かと思いますが、少しでも目標に近づけられるよう消費者として応援したいと思います。
また、日本の戦略の話なので日本の食糧確保の文脈になりますが、視座は高く、世界に持ち続ける必要があります。誰かの犠牲の上に成り立つ社会は持続可能とは言えません。いつ自分が搾取される側になるかわかりません。円安が進み、良い食糧は海外に流れ、安かろう悪かろうな食糧が日本に流通し健康被害が起きる、そんな可能性もゼロではありません。当事者意識を持って食糧の生み出される過程に関心を持ち、より良い選択ができるように心がけていければと思います。
4.同世代に伝えたい点
・みどりの食糧システム戦略について調べてみよう。
・自分達の食べているものがどのように作られているのか興味を持とう。
・環境負荷の低い商品や、フェアトレードの商品を積極的に選ぼう。
・「安くて形が揃っていて綺麗なもの」が本当に良いのか考えてみよう。
・自分のできるところから、CO2削減や環境負荷低減に努めよう。
【講師】
清水 浩太郎
農林水産省大臣官房環境バイオマス政策課 課長
平成6年農林水産省入省。水産庁漁政部水産経営課長、食料産業
局バイオマス循環資源課長、林野庁林政部林政課長を経て、令和
4年6月より大臣官房環境バイオマス政策課長に就任。
-1013x1024.jpg)
【レポート執筆】
市橋 咲/第2期若者アンバサダー
大手通信会社サステナビリティ推進室勤務。⼤好きな⾃然を守るための新しい仕組みを新規事業として推進中。
【関連記事】学びシリーズ第1回「持続可能社会ってどんな社会?」
【関連記事】学びシリーズ第2回「ゼロエミッション東京戦略」
【関連記事】学びシリーズ第3回「気候変動と土地利用」
【関連記事】学びシリーズ第4回「有機農業が育む生物多様性と地域資源活用」
【関連記事】学びシリーズ第5回「生活者を巻き込む森づくり」
【関連記事】学びシリーズ第6回「家では何ができるか?そのリアリティ」
【関連記事】学びシリーズ第8回「SDGsを活かした地域づくり」
【関連記事】学びシリーズ第9回「みんな参加型の循環型社会」
【関連記事】学びシリーズ第10回「水産資源の現状とMSC認証制度について」
【関連記事】学びシリーズ第11回「地域でSDGs・ゼロカーボンを実践し、世界につながる」
【関連記事】学びシリーズ第12回「葛西臨海公園 生態系観察会」
【関連記事】学びシリーズ第15回「郵便局とともに作るサステナブルな未来」
【関連記事】学びシリーズ第16回「個のデザインから2030年カーボンハーフの消費行動改革を考える!」
【関連記事】学びシリーズ第17回「ジェンダーと気候変動-SDGsから考える-」
【関連記事】学びシリーズ第18回「ソーラーシェアリングを活用した地域活性」
【関連記事】学びシリーズ第20回「みどりの食料システム戦略の実現に向けて」