「学びシリーズ」は、DO!NUTS TOKYO公式アンバサダーの皆さんに向けて行われるレクチャーであり、若者アンバサダーとして活動を行っていただく上で参考になると思われる知識の習得や、ご自身の考えをより深めていただくことを目的としています。
第27回目は、2023年10月20日(金)に、資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部の職員の方を講師にお迎えしを講師にお迎えし、「再エネ・省エネ」をテーマに開催しました。
■レクチャーレポート
1.ポイント
- 日本政府は、国民負担の抑制と地域との共生を図りながら、再生可能エネルギー比率を2021年度20.3%から、2030年度36~38%に拡大することを目指す。
- 太陽光発電の適地への最大限導入に向け、公共施設、住宅、工場・倉庫、空港、鉄道への太陽光パネルの設置拡大や、温対法等も活用した地域主導の再エネ導入を進める。
- 洋上風力の導入拡大に向け、秋田県八峰町・能代市沖、長崎県西海市江島沖、秋田県男鹿市・潟上市・秋田市沖、新潟県村上市・胎内市沖の4区域について2022年末に公募を開始、今後、「日本版セントラル方式」を確立し、案件形成を加速する。
- 浮体式洋上風力の導入目標を掲げて技術開発・大規模実証を実施するとともに、風車や関連部品、浮体基礎など洋上風力関連産業における大規模かつ強靱なサプライチェーン形成を進める。
- 地域共生型の再エネ導入拡大に向けた、適切な事業規律の確保のための制度的措置を講ずる。
- 省エネについては、石油危機以降、日本は経済成長と世界最高水準の省エネを同時に達成し続けている。
- トップランナー制度は、製造事業者や輸入事業者に対して、目標年度までにエネルギー消費効率の目標達成を求めるもの。
- 小売事業者表示制度は、家庭部門における省エネ促進のため、エネルギー消費機器の小売の事業を行う者が消費者に対して省エネ性能等の情報提供を行うもの。
2.サマリー
2050年までにカーボンニュートラルに向けて取り組む国は、144カ国となる見込みであり、カーボンニュートラル目標を設定する動きが拡大しています。再エネの導入ペースも世界的に年々増加しています。日本においても、FIT制度(固定価格買取制度)を導入等により、再エネ比率が2011年度10.4%から2021年度20.3%に増加しました。FIT制度は、再エネで発電した電気を、送配電事業者が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度です。電力会社が買い取る費用の一部を利用者から賦課金という形で集め、コストの高い再エネの導入を支えています。2030年度の再エネ比率は36-38%を目指しており、実現に向けて更なる再エネの導入拡大を図る必要があります。
再エネの導入拡大を図るため、住宅や工場・倉庫といった建築物の屋根への導入も有効な選択肢です。建築物への導入拡大に向けては、FIT制度において一定の集合住宅に係る地域活用要件の緩和や屋根への導入に係る入札免除や、初期費用を低減した太陽光発電の導入モデルの構築に向けた補助金等による導入を推進しています。また、事業用太陽光については、地上設置・屋根設置の設置形態毎にコスト動向を分析し、メリハリのついた導入支援を2023年度下半期から実施しています。また①大量導入、②安価な電力、③大きな経済波及効果が期待されることから、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた切り札として、洋上風力発電が注目されています。洋上風力発電の導入拡大に向け、「日本版セントラル方式」を確立し、案件形成を加速します。日本版セントラル方式とは、洋上風力の初期段階で重複して実施される調査について、政府・政府に準ずる主体が実施しデータを管理することをいいます。また、浮体式洋上風力の技術開発について、気象条件やうねりの海象条件のアジア市場に適合し、日本の強みを活かせる要素技術の開発を進めつつ、システム全体として関連要素技術を統合した実証を行うことで商用化につなげます。
省エネルギーについては、石油危機以降、日本は経済成長と世界最高水準の省エネを同時に達成し続けている。省エネ法では、製造事業者や輸入事業者に対して目標年度までにエネルギー消費効率の目標達成を求めるトップランナー制度や、エネルギー消費機器の小売の事業を行う者が消費者に対して省エネ性能等の情報提供を行う小売事業者表示制度が定められている。
3.感想
再エネ比率を2030年度36~38%に拡大するため、再エネの主力電源化に向けて浮体式洋上風力の技術開発が進められているお話を興味深く思いました。浮体式洋上風力はゼネコンだけではなく、新たなステークホルダーとして造船業が入ります。このため、地域の産業や漁業者との共存、共栄が必要になると考えました。再エネの地域共生については、地域におけるトラブルが増加しています。再エネの導入による地域住民の懸念が顕在化し、事実として法令遵守できていない設備や地域で問題を抱えている設備が存在します。再エネに対して誰もが賛成するわけではないという視点を持ちながら、地域の方々の納得感を高めて拡大することが重要になると考えました。
省エネについては、家庭部門における省エネ促進のため、消費者に対して省エネ性能等の情報提供を行う小売事業者表示制度のお話を興味深く思いました。省エネ法にて家電等の省エネ基準を定め、省エネ性能を統一する省エネラベルは、消費者が省エネを身近に考えるきっかけになりえると思います。一方で、省エネラベルは以前より分かりやすい表示になったものの、数値の差がどの程度影響するのかといった具体的なイメージを消費者が持つことは難しいという声がありました。例えば、省エネラベルはスマートに表示しつつ、関心のある消費者はQRコードから詳細をインターネット上で確認できるようにする等、消費者が省エネを身近に感じて理解を高めることのできる機能があると、消費者の関心を更に高める可能性があると考えました。
4. 同世代に伝えたいこと
- 現状、先進国の中で日本の再エネ発電比率は低い値であるが、FIT制度の導入や浮体式洋上風力の技術開発といった2030年に向けたアクションを着実に進めている。
- 石油危機以降、日本の実質GDPは2.6倍、最終エネルギー消費は1.2倍。日本は、省エネ法による規制と支援を通じ、世界最高水準の省エネ達成を続けている。
- 家庭部門における更なる省エネ促進のために小売事業者表示制度があり、電化製品を購入する際に省エネラベルを1つの指標として考えることができる。

【レポート執筆】
土井 優里花/第3期若者アンバサダー
内戦の影響で音楽を教えられる先生が少ない状況に課題を感じてカンボジアで音楽講師をした後、ODA(政府開発援助)における金融セクター業務に従事。
格差社会問題を目の当たりにする経験を重ねる中、どうしたら人は他人のために行動するのかに関心を持ち、慶應義塾大学大学院SDM研究科に進学。利他行動の意義と促進方法を研究する傍ら、未来を担う子どもたちに貢献したい思いから「大人になることに希望を持つ子どもを増やすとともに、大人もワクワクする仕組みをつくる」をコンセプトとしたHAPPY MONDAYを立ち上げ、子どもと大人で力を合わせて月曜日をワクワク迎えることを目指す企画を実施する。システムデザイン・マネジメント学修士。
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